対談 赤塚耕一×宮崎由至さん

「三重の神酒」を醸す、
清らかな自然を守りたい

創業166年という三重県四日市市の老舗酒造メーカー「宮崎本店」。今回のゲストは、赤塚グループとも浅からぬ縁がある六代目蔵元・宮崎由至さんです。
2013年、20年に一度社殿をつくり替え御神体を遷す「式年遷宮」が行われる伊勢神宮。宮崎本店は前年から、伊勢神宮をはじめ三重県下817の神社で行われる新嘗祭に供える神酒『三重の新嘗』の醸造を務めることになりました。

『BOSCO TALK』
赤塚耕一 × 宮崎由至さん(宮崎本店 代表取締役社長)
(※みやざきの「さき」は つくりの上が「立」です)

奉納された神酒『三重の新嘗』。約3000本が謹醸され、三重県内各神社で行われる新嘗祭で神前に供えられた。


赤塚 素晴らしい神酒の完成、本当におめでとうございました。

宮崎 ありがとうございます。

赤塚 神酒の醸造は大変名誉なことですが、それだけにプレッシャーもあったのではないですか?

宮崎 神社庁から依頼があったのは2012年の夏頃。11月の新嘗祭には絶対に間に合わせなければと、大至急、仕込みに取り掛かりました。でも最初はいい味が出せなくてね。試作を飲んだ神社庁の方にも「ん~、これじゃあちょっと……」って(笑)。神酒は約3,000本つくって各神社に納めるのですが、おいしくないと「ウチは要らん」と引き取ってもらえず、残ってしまうんです。

赤塚 なるほど、神酒ゆえに一般販売もできないんですよね。

宮崎 ええ。しかも神酒醸造が最優先で、その間は他のお酒の製造をすべて止めなくてはいけない。名誉なことですが、リスクも大きいんです。杜氏と仕込みを何度も繰り返して、ようやく納得できる最高の酒ができました。神酒の完成を報告する醸終祭で祝詞を受けたときは、大役を果たせた喜びと、責任の重さを改めて感じました。

2012年11月9日に宮崎本店で行われた醸終祭では玉串を捧げるなどの神事で神酒の完成を報告した後、宮崎社長から三重県神社庁長に神酒が手渡された。

敷地内に見える道は、一般の公道。子どもたちが毎日行き交う通学路になっている。

事務所の扉ひとつにも老舗の歴史と風格が(左)。
事務所に鎮座するのは歴史を感じさせる古い金庫。その上には歴代社長の肖像が並ぶ(右)。

常に環境へのこだわりを

宮崎 この素晴らしい神酒ができたのは、赤塚グループさんとのご縁のおかげでもあるんですよ。

赤塚 宮崎本店さんでは酒づくりの仕込み水にFFCウォーターを使っていただいているんですよね。

宮崎 ウチは地元・鈴鹿山系の良質な伏流水を使っているのですが、10年ほど前からFFC元始活水器を導入、伏流水をFFC処理して仕込み水にしています。正直言って一大決断でした。酒の命は水。水が変われば味も変わってしまう。でも実際に使ってみると酒の味わいが格段によくなりました。そこで今度は工場で使う水をすべてFFCにしたところ、工場廃水までがすごくきれいになったんです。

赤塚 御社の工場見学では排水処理の現場まで見せているとか?

宮崎 酒は自然の恩恵でつくるもの。自然からいただいたものは、できるだけそのままで自然に戻すのが私たちの務めです。FFCウォーターを使用することでそれが可能になりました。水を戻す過程もきちんと知ってほしい。環境へのこだわりは常に持っています。

すべての仕込み水に元始活水器で処理したFFCウォーターを使用。

 

自然からの恩恵は、
そのままで自然に返すべき

環境へのこだわりで
四日市のイメージを変えていきたい

赤塚 四日市で166年。この地域への思い入れも強いと思いますが、四日市というと公害というイメージがいまだに強いのでは?

宮崎 自然からいただいたものを壊さないという意味では、もっとも悪しき例としてコンビナートがありましたから。だからこそ、地元企業として私たちは誰よりも環境に敏感になるべきです。そうすることが、地元の悪いイメージを払拭するための力になるんですよ。

赤塚 そんななか、御社に新嘗祭の神酒づくりが依頼されました。

宮崎 はい。数あるなかで四日市にある当社が伊勢神宮の神酒づくりを任された―。これは一酒蔵の名誉だけではなく、四日市が持つ悪いイメージを払拭する一助にもなったのではないかと思うんです。

赤塚 その意味でも地元企業としての地域貢献ができましたね。

宮崎 そうですね。でも本当に大事なのはこれからです。マイナスイメージを払拭するだけでなく、四日市は環境にこだわった企業が集まっている地域なのだというプラスイメージをつくっていくことが重要なんです。そのためにも今まで以上に地元企業のあり方が大切になってくると思うのです。

「FFCの技術が、お酒づくりを通じて地球環境の改善につながっていく。私たちと宮崎本店さんが、お互いに同じ理念と意識を共有できていることを、とてもうれしく思っています」と赤塚耕一社長。

赤塚 地域貢献から地球規模の環境問題までを見据え、常に自然の恩恵の循環を考えて取り組んでいらっしゃるのですね。FFCテクノロジーも、私たちが望んでいる理想的な使い方をしていただき、心からありがたく感謝しています。

宮崎 水という自然の恵みを守り、循環させ、その価値をより高めていく。私たち宮崎本店と赤塚グループさんの企業理念は、底辺でしっかりとつながっているんですね。業種は違えど同じ理念、同じ意識を共有して企業活動をしている。赤塚さんとウチとは単なるビジネス上の取引先ではなく、理念と思想の絆でつながっている大切なパートナーだと思っています。

赤塚 今後の企業活動についてはどのようにお考えですか?

宮崎 いい製品をつくる、製品が売れる、これももちろん大事。でも今はそれだけの企業活動ではダメなんです。地元に、地域の環境に、どう貢献できるか。自然からいただいたものをどうすればそのままで自然に戻せるか。そうしたシステムを考えていかなければ企業として存続できません。私たちはこれからも、ノウハウによる製品づくりだけではなく、地元企業にとって本当に価値のある活動を目指していきたいと思っています。

大正の香り漂う応接室。宮崎本店には大正から昭和初期に建てられ、国の有形文化財にも登録されている由緒ある建造物が多い。

「キンミヤ焼酎」の愛称で人気の甲類焼酎『亀甲宮焼酎』、三重県産山田錦の芳醇な味わいと濃厚な旨みが堪能できる清酒『宮の雪』など酒好き垂涎のラインナップ。

『極上 宮の雪』の仕込みタンク。1つのタンクで一升瓶にして約2万本を仕込む。

『三重の新嘗』はまろやかでコク深いにごり酒。


宮崎由至(みやざき・よしゆき)さん

1947年、三重県生まれ。1987年代表取締役に就任、六代目蔵元となる。以来、「品質本位」を社是として、地元に密着した酒づくりを推進している。

◆宮崎本店ホームページ https://www.miyanoyuki.co.jp/

敷地内にある倉庫を改装したお酒の資料館にて。


2013年1月発刊『BOSCO 1号』掲載 BOSCO TALK
撮影/野呂英成 取材・文/柳沢敬法