対談 赤塚耕一×大林修一さん

植物とともに暮らすことで、
人はもっと健康に、心豊かになれる。

愛知県豊橋市に本社を置き、ハイドロカルチャー(水耕栽培)という栽培方式で、暮らしと植物の新しい関係構築を目指している株式会社プラネット。
今回のゲストには、その代表取締役社長・大林修一さんをお招きしました。

『BOSCO TALK』
赤塚耕一 ×大林修一さん(株式会社プラネット代表取締役社長)

2013年4月発行『BOSCO 2号』掲載 BOSCO TALK


日本全国の園芸業界の関係業者約80社が加盟し、園芸の現状や将来について意見交換をする「新しい園芸を考える会」。赤塚社長と大林社長は、この会でお互いに理事を務めています。そうした活動を通じて赤塚社長は、室内緑化をはじめとする環境緑化を真摯に推進する大林社長の姿に強い共感と尊敬の念を覚えたといいます。

「身近なスペースを緑の空間にリニューアルすることで、植物に囲まれた快適な暮らしを提案したい」と語る大林社長。赤塚耕一社長は、「志を同じくする兄のような存在」と慕っている。

赤塚 大林社長が推進されているビルの屋上や壁面、室内など、建物内外の環境緑化事業からは“緑あふれる生活環境”への思いの強さを感じます。私たちにとって植物を身近に置いた生活の効用にはどういったものがあるのですか?

大林 私はオフィスや店舗、公共施設だけでなく、一般家庭でも室内園芸をもっと普及させたいと考えています。これまでの日本では、室内の植物はあくまでも観賞用、インテリアの一部と考えられてきました。しかし植物の存在は、私たちにとってもっと重要な意味を持っています。

赤塚 それは、例えば―?

大林 ひとつは空気浄化。つまり、部屋の空気をきれいにしてくれるということです。

赤塚 植物は空気中の二酸化炭素を吸収して酸素を排出し、糖分を合成する光合成を行いますし、葉っぱからは水蒸気として水分も放出していますよね。

大林 さらに植物には空気中の汚染物質を除去する力もあります。こんな話があります。かつてNASA(アメリカの航空宇宙局)が月に宇宙基地を作る計画を立てた際に、基地内の閉鎖された空間で人間が生命を維持するためのシステム開発に乗り出したんです。

赤塚 多くの有害物質が含まれる基地内の空気をどう処理し、きれいな空気を作り出すか―。

大林 ええ。そこでNASAが着目したのが植物でした。室内に植物を置いて実験した結果、空気中の有害物質が減少し、空気が浄化されていることが分かったんです。

赤塚 植物が室内の空気の質を向上させているわけですね。

大林 人間はみな酸素を摂取し、二酸化炭素を出して生きています。自分が出した二酸化炭素をオフセットする(打ち消す)ためにも植物を植えることは大事なんですね。植物を育てることは、そういう意味でも地球環境に貢献することになるんです。

赤塚グループ東京支店・銀座サテライトに設置された(株)エフエフシー・ジャパン取り扱いの栽培プラント『ボスコベジー』。ここでもハーブや野菜がハイドロカルチャーで栽培されている(左)。
ハイドロカルチャーが提供する理想的な栽培環境は、繁茂する根からもうかがえる(右)。

植物を育てることで、
人は命を育てること、
命を慈しむ心を学ぶんです。

赤塚 それに植物は私たちのメンタル面にも好影響がありますね。人は緑色を見ると心が安らいで落ち着くといいます。

大林 ギスギスした世の中で溜まったストレス解消にも、植物はもってこいなんですよ。

赤塚 最近では「園芸療法」という言葉もよく聞きますね。

大林 植物の世話をすることで人の心や体のケアをする―とても重要ですね。植物の世話には、香りや手触りなど人間の五感に訴えるものが多いですから。それに植物を育てることは命を育て、命を慈しむことにもつながります。

赤塚 それは近年注目されている「花育」にも通じていますね。植物とともに生きることは、“命”を学ぶこと。それは人間にとって、とても大切なんですね。

水と植物のいい関係が地球環境を改善する

赤塚 御社では土の代わりに粘土を焼いた植え込み材を使って植物を育てるハイドロカルチャーという栽培方法を提供されていますね。

大林 都市部や室内などでは、土を使わずに水だけで栽培できるため、お客様からも喜ばれています。植物栽培で失敗するのはほとんど水管理です。目分量でやるから失敗する。その点、ハイドロカルチャーは水位計を使うなど水管理が非常に明確になるため、栽培の失敗が少なくなるんです。

土を使わないハイドロカルチャー栽培。(左) ハイドロカルチャーで使用する、粘土を焼いた植え込み材「ハイドロボール」。(右)

赤塚 水管理がシステム化できれば、家庭内や室内での植物栽培がより身近で手軽になりますね。

大林 そして、土を使わずに命ある植物を育てる栽培法だからこそ、水というものの存在がより重要になってくるんです。

赤塚 ええ。私たち人間の暮らしには、水と植物は切っても切り離せないもの。私どもがFFCの技術で“命を育む水”の研究・提供を続けているのも、まさに命を大切にしたいからなんです。いい水を吸えば植物が元気になり、元気になった植物が活発に蒸散すれば空気もより浄化される。水と植物のいい関係が、地球環境にも好循環を生みだすのですから。

大林 そういう意味で、命を育む水を生み出す赤塚グループさんのFFC技術は、園芸業界の発展や植物栽培の普及に大きな好影響を与えてくれるものだと思います。

赤塚 当社では『BOSCO』というプロジェクトで、水や植物を暮らしに取り入れるライフスタイルの提案をしています。目指すところはハイドロカルチャーをはじめとした植物や環境緑化に取り組む御社と同じ。水と植物。この切り離せない2つの観点から、お互いにより連動を深めて、地球環境の未来を見据えた企業活動をしていきたいですね。

大林 はい、これからもお互い、前向きに取り組みましょう。

植物、水、地球環境―二人の話は尽きない。

いい水が
元気な植物を育てる。
水と植物の両面から
地球環境を考えていきたい。


大林修一(おおばやし・しゅういち)さん

1958年、愛知県豊橋市生まれ。千葉大学園芸学部を卒業後、実家の園芸農家を継ぐが30歳で独立。植物の生産、流通、レンタル事業などを行う株式会社プラネットを設立。
◆株式会社プラネットホームページ http://www.g-planet.com/index.html


取材・文/柳沢敬法 撮影/野呂英成