健康的で風味豊かな漬物の世界

星澤幸子の和食の力 第3回 漬物


豊富な乳酸菌を含む、優れた日本の伝統食、漬物。貴重な保存食でもあった漬物は、日本各地でその土地の風土に合ったものが受け継がれてきました。最近では糠床が静かなブームとなり、“マイ糠床”を楽しむ若者もいるそうです。その風味と健康への効能を再確認してみましょう!


日本人の祖先達は、食糧不足という敵と戦ってきた2千年の長い歴史のなかで、その大事な役割を漬物に求めてきました。

海水からの塩が、食べ物の保存に大きな役割を果たすことを知り、食生活は飛躍的に豊かになります。特に日本は豊富な海山産物と、発酵に適した土地柄に恵まれたことで、発酵食品の種類は世界に類を見ない多さです。

古くは奈良・平安時代の僧侶が食糧として、酒粕、もろみ、味噌などを漬けてきました。そして鎌倉時代には、茶の湯の発展により、漬物は「香のもの」として扱われるようになります。さらに江戸時代になると、全国から江戸に集まる商人により、調味の仕方、漬け方にも工夫が凝らされるようになり、一般庶民にも広がりました。 一汁一菜が確立されたのが鎌倉時代で、江戸時代には白米の流行により、漬物がより美味しい副食になり、発展していったのではないかと考えられます。

日本では今から60年程前、昭和30年代頃までは(私が物心ついた頃)、特別な行事を除いては、麦ご飯と味噌汁、煮野菜やお浸し、漬物という食生活が、何百年も大きな変化もせず続いてきました。

その後、経済の急速な発展とともに、憧れであった欧米の食文化に傾斜していき、僅か半世紀余りの間に、本来の日本型食生活はその姿を崩しています。しかし、日本人は素朴な伝統食で肉体と精神を育み、この小さな国土、日本をここまで発展させてきたのです。

現在は、24時間いつでも好きな物を、そして世界中の美味しい物を食べられて、一見豊かになったかのようです。ところがその一方で、国民は健康を失い、医療費は天井知らずです。塩分の多い漬物が医学的に肩身の狭い存在になってから、しばらく経ってしまいましたが、先人が作り上げてきた食文化の意味は深く、今一度「漬物」の持つ底力を見直してみるべきだと思います。

漬物に含まれる乳酸菌やビタミン、酵素の力、さらに玄米と味噌汁があれば、人間は生きて行けるのだと思うと、私も余計な物を食べ過ぎていると反省します。

食品事故があっては困るからと、熱処理や薬品に漬けて品質管理された食材ばかりではなく、昔ながらの作り方の、本当に活きた食材を摂ることで、ご自身の身体を喜ばせてあげて下さい。

≪糠漬け≫

~毎日愛情を注いで手で混ぜ、漬かった野菜は栄養たっぷり~

【材料】(作りやすい分量)

米糠2kg/塩260g/水2L/パイロゲンキャップ3杯/昆布 10cm/たかのつめ3本/野菜くず(大根、にんじんの端切れ、キャベツの芯など)適量/好みの野菜適量/塩少々

【作り方】

  1. 鍋に塩と水1Lを入れて火にかけ、塩が溶けたら火からおろして残りの水1Lを加えて冷まします。
  2. 糠、塩水、パイロゲンをよく混ぜてから、漬ける容器に入れ、昆布、たかのつめを加えます。
  3. 野菜くずを加えて日に一度は混ぜるようにし、2~3日漬けて糠床を作ります。
  4. 漬けていた野菜を捨て、好みの野菜に塩少々をすり込んでから、糠床に入れて半日~1日漬けます。糠を洗い落とし、食べやすく切っていただきます。

≪にしん漬け≫

~ポリ袋を使って郷土料理をいつでも作ることができます~

【材料】(作りやすい分量)

みがきにしん200g/米のとぎ汁適量/キャベツ1玉/大根1本/にんじん1/2本/しょうが2片/細切り昆布ひとつまみ/ご飯1膳(150g)/水カップ1杯/乾燥こうじ70g/塩(野菜全体量の3%)/パイロゲンキャップ2杯

【作り方】

  1. みがきにしんは米のとぎ汁に一晩浸して戻します。ご飯に分量の水を加えて10分程煮ておかゆを作り、指が入る温度に冷めたらこうじを混ぜます。
  2. にしんはひと口大のそぎ切りにします。
  3. キャベツはひと口大、大根は皮をむいて乱切り、にんじんとしょうがは千切りにします。全体量を計り、使う塩を計算します。
  4. キャベツ、大根、にんじんはそれぞれ使う塩を分けて塩揉み。しんなりしたら水気を切ります。
  5. 塩揉みした野菜とにしん、しょうが、こうじ、細切り昆布、パイロゲンを混ぜてポリ袋に入れます。上から重石をして冷蔵庫で2週間程漬けます。

≪キャベツの浅漬け≫

~作り置きができて、サラダのように毎食食べたい一品~

【材料】(作りやすい分量)
キャベツ300g/きゅうり1本/塩少々/にんじん30g/しょうが1片/きざみ昆布ひとつまみ/塩小さじ1杯強/パイロゲンキャップ1杯

【作り方】

  1. キャベツは水に浸してパリッとさせてからひと口大に切り、きゅうりは塩少々でこすり洗いをしてから縦半分の斜め薄切り、にんじん、しょうがは極細い千切りにします。
  2. ポリ袋に全ての材料と塩、パイロゲンを入れ、空気を入れて袋を膨らませて振ります。塩が全体に混ざったら空気を抜いて口を閉じ、20~30分置きます。

≪ピクルス ア・ラ・カルト≫

~季節の野菜をいつでも手軽に、健康的に~

【材料】(作りやすい分量)
●カリフラワー1株/塩、水溶き小麦粉各少々/たかのつめ1本
●きゅうり3本/塩少々/たかのつめ1本
●パプリカ(赤・黄)各1個/たかのつめ1本
【基本のピクルス液】酢、水各カップ1/2杯/てんさい糖大さじ3杯/塩小さじ1/2杯/パイロゲンキャップ1杯

【作り方】
瓶を熱湯消毒します。基本のピクルス液の調味料をよく混ぜ、てんさい糖、塩を溶かします。

≪カリフラワーのピクルス≫

  1. カリフラワーは小房に分け、塩と水溶き小麦粉を入れた湯で茹でます。たかのつめは種を取ります。
  2. 瓶にきっちり詰め、たかのつめとカリフラワーが浸かる程度のピクルス液を注ぎ、2~3時間漬けます。

≪きゅうりのピクルス≫

  1. きゅうりは塩で板ずりしてから洗い、食べやすい大きさに切ります。塩少々をまぶしてしんなりしたら水気を絞ります。たかのつめは種を取ります。
  2. 瓶にきっちり詰め、たかのつめときゅうりが浸かる程度のピクルス液を注ぎ、2~3時間漬けます。

≪パプリカのピクルス≫

  1. パプリカは食べやすい大きさに切ってサッと茹でます。たかのつめは種を取ります。
  2. 瓶にきっちり詰め、たかのつめとパプリカが浸かる程度のピクルス液を注ぎ、2~3時間漬けます。

≪彩り野菜のカレーピクルス≫

~毎日食べたいさっぱり味~

【材料】(作りやすい分量)
長いも100g/セロリ、きゅうり各1本/塩少々/にんじん、ごぼう各小1本/レーズン大さじ2杯
【カレー甘酢】水カップ1/2杯/酢カップ1杯/カレー粉大さじ1杯/てんさい糖大さじ3杯/塩小さじ1杯/パイロゲンキャップ1杯

【作り方】

  1. 長いも、セロリは皮をむき、きゅうりは塩で板ずりしてそれぞれひと口大に切ります。にんじん、ごぼうは皮をこすり洗いして小さめのひと口大に切り、ごぼうは水に浸して何度も水を替え、アク抜きします。
  2. 鍋に水以外のカレー甘酢の調味料を入れて火にかけ、てんさい糖が溶けたら火からおろし、水とパイロゲンを加えます。
  3. 鍋に湯を沸かして塩を入れ、長いも、セロリ、きゅうり、レーズンの順でサッと湯通ししてから、にんじん、ごぼうの順で茹でます。
  4. 材料が熱いうちに瓶や保存容器に入れ、浸る程度のカレー甘酢を注いで3~4時間漬けます。

≪玉ねぎのマスタードピクルス≫

~どんな料理にも相性ピッタリ~

【材料】(作りやすい分量)
玉ねぎ大1個/塩、油各少々
【ピクルス液】粒マスタード、てんさい糖、水各大さじ1杯/酢大さじ2杯/塩小さじ1/2杯/パイロゲンキャップ1杯

【作り方】

  1. 玉ねぎは縦半分に切り、根の部分を取ります。2~3枚ずつはがし、1cm幅のくし型に切ります。
  2. 湯を沸かして塩と油を入れ、玉ねぎを加えてサッと茹でてザルにあげます。
  3. ボウルにピクルス液の調味料とパイロゲンをよく混ぜておきます。玉ねぎが熱いうちに瓶や保存容器に入れ、浸かる程度のピクルス液を入れて30分程漬けます。

星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん

料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。

星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com

 

 


2016年10月発刊『BOSCO 16号』掲載記事
撮影/大滝恭昌