対談 赤塚耕一×松山増男さん

未来を見据えて、今を生きる
北の大地で目指す持続可能な社会

今回の対談には、北海道江別市で牧場経営から手づくりハム・ソーセージなどの製造、レストランの運営などを手広く手掛ける(株)トンデンファームの取締役会長、松山増男さんをお迎えしました。
インディアンの文化にも造詣が深いという松山さんと、自然豊かな北海道の地で環境や教育への向き合い方などについて語り合いました。

『BOSCO TALK』
赤塚耕一 ×松山増男さん((株)トンデンファーム取締役会長)


次世代に引き継ぐ
自然と、自然に感謝する心

赤塚 現在、トンデンファーム様では骨付きソーセージ、ハム、ベーコンといった加工肉製品の製造販売のほかに、ここ「アースドリーム角山農場」も手掛けていらっしゃいますね。北海道の自然の中で動物たちと触れ合えるこうした体験型の牧場は、とても素晴らしい施設だと思います。

松山 正直な話、利益だけを考えたらアースドリームはほとんど利益が出ていません。でも私がやりたい商売は利益だけが目的ではありません。もちろん人にはそれも必要だけど、同時に「心」や「理念」といったものも欠かせない。大事なのはそのバランスだと思うんです。

赤塚 今日も夏休みで多くの家族連れが遊びに来ていますが、どの子も目の輝きが違います。

松山 アルパカやヤギ、ウサギに餌やりができるエリアで、子どもたちが無心になって楽しんでいる姿を見るにつけ、「ああ、この施設をつくってよかったな」としみじみ感じます。子どもたちが大人になったとき、ここで感じたり学んだりしたことを自分の子どもに伝える。その子たちがまた自分の子どもに伝える――そうやって大切なことが未来へと受け継がれていくことが大事なんです。

赤塚 そうですね。技術が革新的に進歩している今の時代ゆえに、動物や植物との接点はとても貴重で大切になります。それこそが近年よく言われる「持続可能な社会」をつくるためのいちばんの基盤になるのだと思います。

アースドリーム角山農場の「ふれあい館」でウサギと遊ぶ赤塚社長

アルパカとのスリーショットという貴重な一枚も

松山 例えばアメリカン・インディアンには「7代先の子どもたちのために、今を生きよ」という教えがあるんです。セブンス・ジェネレーションというのですが、動物や植物など〝命〟に触れる場をつくることは、将来の日本にとって本当に必要だと思います。

赤塚 7代先、セブンス・ジェネレーションですか。とても意義深い教えですね。損得やビジネスを超えて自然と命に感謝し、敬意を払い、守ること。そしてその自然と命を愛する心を次世代に残していくこと。これこそ、大人が「今、やるべきこと」なのだと、私たちは改めて心に刻まなければいけませんね。

松山 はい、おっしゃるとおりだと思います。

赤塚 もうひとつ感じるのが、自然や命との触れ合いというのは、子どもだけでなく、私たち大人にとっても不可欠なものだということです。こうしてアースドリームを訪れる親子連れのお客さまを見ていると、子どもはもちろん、親御さんたちの表情も活き活きしていますよね。私も先ほどアルパカや馬、ウサギと触れ合ったときには、気分はすっかり子どもの頃に戻っていました(笑)。心の荒廃がもたらす痛ましい事件や、仕事や人間関係のストレスによる精神的な疲れなど、本当は大人のほうが自然や命との接点を必要としているのかもしれません。

松山 大人も子どももみんな、自然との触れ合いに飢えているんですね。便利になっていく一方の世の中ですが、それは実は人間にとって衰退に向かっているようにも感じます。だからこそ、トンデンファームやアースドリームという場所が必要だというのが私の想いなんです。

「7代先の子どもたちのために」――。
アメリカン・インディアンの教えこそ、
今の日本に必要なのではないでしょうか。

ホタルのせせらぎに
FFCの素晴らしさを実感

赤塚 こちらでも早くからFFCを導入していただいています。もう長いお付き合いになりますね。

松山 そうなんですよ。今でもよく覚えているのが、以前、三重の本社を訪ねた際に敷地内で見学したホタルのせせらぎです。コンクリートを打ったばかりのせせらぎで生き物が活き活きとしている光景には「これはすごい」と衝撃を受けました。

赤塚 ありがとうございます。FFCによるホタルの生育可能な生態系づくりの試みは、多くの方々から高い評価をいただきました。

松山 また数年前にはレッドヒルにも行ったのですが、そこで感じた生気みなぎる木々や花々の力強さや美しさにも感動しました。改めてFFCの素晴らしさを実感したものです。

赤塚 私が思うに、松山会長はご自身が常日頃から自然の中に身を置き、動物たちと触れ合う環境にいらっしゃるから、自然の活力や息吹といったものにすごく敏感なのではないでしょうか。

松山 確かにそれはあるかもしれません。トンデンファームでは、ソーセージ・ハムの加工工場やレストラン、養豚舎などにFFCを導入しておりますが、排水がきれいになる、臭いがなくなるといった実感に加えて、水が変わったことで周囲に〝いい気〟が集まってきているな、とも感じているんです。

赤塚 気、ですか。

松山 ええ。おかげさまでトンデンファームもアースドリームもたくさんのお客さまに利用していただいていますが、自然にいいものを使おう、自然環境にプラスになる取り組みをしようという姿勢が、いい気を呼び寄せ、人を呼び寄せているのではないか。FFCという技術は、結果としてそうした目に見えない効果ももたらしているのではないか。あくまでも私の実感ですが、そんなふうに思っています。

養豚舎に設置されたFFC元始活水器。こうした場所特有の臭いがほとんどなく、衛生面の向上にも貢献している。

松山 そういう意味でも、レッドヒルも本当に素晴らしいところですね。あの森には本当に〝いい気〟が満ちている。これから先、周辺の開発が進むかもしれませんが、あの場所だけはいつまでも残してほしいですね。

赤塚 ありがとうございます。それも私が先代から引き継ぎ、そして未来に向けて果たしていかなければいけない責務だと思っています。

松山 赤塚グループさんにはいつかぜひ、自然と動物に触れ合えるようなエリアをつくっていただきたいと思っているんですよ。そうすれば子どもの教育の場になり、大人の癒しの場になり、将来に向けての研究の場になるはずです。難しいこともあるとは思いますが、動物のことならば全面的に協力させていただきます。

技術の進歩し続ける現代だからこそ
動物や植物との接点は欠かせない。
それが持続可能な社会の基盤になるのです。

インディアンに学ぶ
自然との向き合い方

赤塚 さきほどのお話にもありましたが、松山会長はアメリカン・インディアンとの交流があり、造詣も深いとお聞きしています。

松山 私の母校である酪農学園大学(北海道江別市)の建学の精神が「神を愛し、人を愛し、土を愛する」というキリスト教の「三愛主義」だったんです。そこから、マザーアース(母なる大地)というアメリカン・インディアンの精神に感銘を受けたのが関心を持ったきっかけです。交流はもう30年くらいになります。

赤塚 毎年、インディアンの儀式にも参加されているとか。

松山 はい。15年くらい前から毎年夏にアリゾナのインディアンの儀式に参加しています。「サンダンス」といって、4日間絶食して、太陽が出ている間、母なる大地への感謝の祈りを捧げながら、生命の木(サンダンスツリー)の周囲で踊り続けるというもの。最終日には生命の木とサンダンサー(踊る人)の肉体の一部をつなぎ、祈りを捧げる「ピアッシング」と呼ばれる儀式が行われます。

赤塚 まるで苦行のような過酷なものなのですね。

松山 自分の身体を犠牲にすることで人間と自然界のバランスを取り、人々の安寧を願うということなんです。そのときの傷跡も、ほら、こんなふうにね。あんまり人には見せないんですけど(笑)。すぐには踊らせてもらえないのですが、何度も足を運ぶうちに踊ってもいいよと許されまして。でも最初はその圧倒的な緊張感からなのか、許されたのに踊れなかった時期もありました。でもいざ参加してみると、その場に流れている〝気〟が心地よく感じられるようになったんです。

対談はアースドリーム角山農場の事務所で行われた。同じ理念を持つ者同士だからこそ、お互いに共感し合い会話も弾んだ。

赤塚 なかなか得られない経験ですよね。なるほど、そうやって人間の体の一部を捧げることで、自然と一体化するということなのでしょう。会長のそうした貴重な経験が、御社の社是である「大地、愛、勇気」にもつながっているように感じます。この社是のなかでは、とくに「勇気」という言葉にも惹きつけられるのですが。

松山 そうですね。母なる大地に感謝し、守っていくこと。命あるものすべてを愛し、つながりを大事にすること。そして、それ以上に大事なのは、その想いを実際の行動に移していくことです。それには勇気が求められる。だから大地、愛、そして「勇気」なんです。

赤塚 すばらしいですね。母なる大地から生まれる水を独自の技術で活かし、大切な人や自然環境のためにという気持ちに支えられ、勇気と情熱を持ってこの技術を広めていく。松山会長のおっしゃる「大地、愛、勇気」という理念は、私どものそれともピタリと一致しています。

松山 そう言っていただけると私もうれしいですね。私たちは動物、赤塚さんは植物という違いはあっても、底辺に存在している〝大切な想い〟は同じ。そう思います。
今の時代、理念だけでは事業として存続できないなどと言われます。でも信念をもって正しいことを貫いていれば、社会が、世の中が、必ずその人や企業を生かしてくれる。私はそれを信じているんです。

赤塚 素晴らしいですね。そのお考えにも心から共感します。本日はありがとうございました。

 

FFC活用産品が集う「FFCすこやか物産展 in 北海道」の様子。2018年8月25日~26日、トンデンファームの毎月恒例のガーデンセールに合わせて開催された。

骨付ソーセージ、ベーコン、ビーフハンバーグ、ジンギスカンなどを工場直売価格で販売する本社売店前にて。


松山 増男(まつやま ますお)さん

1942年静岡県生まれ。酪農学園大学卒業後、1966年、24歳で北海道江別市野幌の地で養豚業を開始。精肉店経営を経て、1975年松山畜産有限会社(現在の株式会社トンデンファーム)を設立。1991年に骨付ソーセージの特許取得、その後、食肉加工工場や白老牧場の開設、レストランなど事業を広げる。ドイツ農業振興協会(DLG)主催の国際ハム・ソーセージ品質コンテストにて受賞を重ね、本場ドイツでも高い評価を受ける。2015年 アースドリーム角山農場を開設。現在、株式会社トンデンファーム取締役会長。

■店舗情報
夢工房トンデンファーム 本社工場
江別市元野幌968-5
☎ 011-383-8208(営業日のみ)
営業時間等は下記ホームページをご覧ください。
http://www.tondenfarm.co.jp

アースドリーム角山農場
北海道江別市角山584-1
☎ 011-391-2500
営業時間・休業情報等は下記ホームページをご覧ください。
http://www.tondenfarm.co.jp/earth-dream-kakuyama


2018年10月発刊『filanso style 23号』掲載
撮影/野呂英成 取材・文/柳沢敬法