世界遺産の危機を救え

美しき伝統文化を取り戻せ。
FFCの技術で挑む
イフガオ棚田群保全の取り組み

フィリピンの世界遺産「イフガオ棚田群」。長い歴史を持つ文化と美しい景観が近代化の波によって瀕死の状態にさらされている。その危機を救うべく始まったFFC技術による環境改善プロジェクトの様子を追った。

FFCノンフィクションvol.5 「世界遺産の危機を救え」
(フィリピン・ルソン島)


目指したのは、
自然環境の保全と伝統文化の継承。

どこかから悲鳴が聞こえたような気がした―。2016年2月、フィリピンを訪問していた赤塚耕一社長は目前に広がる棚田群を見てそう感じたという。

フィリピンの首都マニラから北に300kmほどのコルディリェーラ行政地区イフガオ州にあるイフガオ棚田群』。
山岳民族のイフガオ族によって2000年間守られてきた棚田群は、その文化・歴史的背景と美しい景観が評価されて1995年に世界遺産に登録された。
棚田をすべて平らにして並べると、その総延長は地球半周分の2万㎡にも及ぶと言われ、そのスケールの大きい美しさから「天国への階段』とも称されている。

しかしその世界遺産は今、危機的な状況に陥っている。

棚田群による持続可能な農業が綿々と受け継がれてきたイフガオ州の村々にも、近代化という時代の波は急速に押し寄せてきた。
そして後継者不足による耕作放棄や大規模な商業伐採などにより、「天国への階段』の美しい景観は荒廃や崩壊にさらされる。一時は世界危機遺産リストに登録されてしまうほどに棚田群は傷ついていたのだ。

赤塚社長が聞いたのは、危機に瀕する世界遺産が発する“声なきSOS“ だったのかもしれない。

荒廃が進む水田の一部。棚田の崩壊や耕作放棄などにより草木が生い茂る状態に(中央:傾斜地)

除草剤の使用も始まるなど、新たな問題も危慎される。

傷ついた世界遺産の
声なきSOSにFFCの手を

その日、赤塚社長はルソン島の町スーピックで貧しい方々のためにクリニックを開設し、助産師として活動しているフィランツ会員・冨田江里子さんを訪問した。

その際に江里子さんのご主人で、NPO法人『NEKKO』としてフィリピンで植林や農業の支援活動、イフガオ棚田群の保全に長年尽力している冨田一也さんと出会い、その情熱をうけ、棚田群を訪れることになった。

そこで赤塚社長は声なきSOSを聞き、危機的な現状を知って、すぐさまFFC技術による環境改善の取り組みを提案。ここに「イフガオ棚田群保全プ口ジェクト』が立ち上がった。

赤塚社長の決断からわずか2ヵ月後の2016年4月、イフガオ州ウハ地区にある棚田の水源のひとつにFFCセラミックスを設置。農業の命である水の改質から取り組みがスタートした。

FFCセラミックスを設置する水源を丹念にチェック。

農業の命ともいうべき水を変えるため、水源にFFCセラミックスを入れたタンクが設置された。

併せてもうひとつの重要なFFCの活用方法として、必ず水が通る棚田の最上段の水田にFFCエースも散布された。

水源から湧き出た水はFFCセラミックスによって処理されて棚田最上段の水田に注がれる。その水田にはFFCエースが散布されており、FFC処理された水がさらにその流域下の階層にある多くの水田へと流れ込む。こうしたFFCの活用方法を採用することで棚田群の水と土を改質・改善し、収穫量を上げてかこうというのが目的だ。

この作業には赤塚グループのスタッフとともに冨田一也さんをはじめとする現地の方々も参加。すべての人が「棚田よ、よみがえれ」という思いを胸にしながら設置作業を行った。

冨田一也さん(右端)や現地の人々と赤塚耕一社長(中央)

人々の想いとFFCで
未来のために、今、水を、土を変える。

FFCセラミックスの設置とFFCエースの散布から比較的早い段階で変化は現れた。赤塚社長のもとには現地の農家の方々から驚きと喜びの声が届いてきた。

水源に近い水田を持つ方からは「FFCセラミックスを設置後、水生生物の数が増えてきた」「稲の背丈がこれまでよりも伸びている。昨年より収穫量も増加した」といった声が寄せられた。

プロジェクト開始後初めての収穫時期を迎えた棚田。昨年に比べて稲の生育も向上し、収穫量も大幅に増加している。

またFFCセラミックスを設置した水系の中流域からは、水田のなかでたくさんの貝が採れているという報告もあった。

水田のなかを歩いていた子どもが足元にある貝に気づいて採り始めたところ、わずか日八万ほどで二枚貝や巻貝でバケツがいっぱいになった。

貝のサイズもこれまでのものとは比べものにならないほど大きく、しかも次から次へと大量に採れたという。大騒ぎしながら夢中で貝採りを楽しむ子どもたちの姿に、何とも言えぬ喜びを感じたと。

水田で育てている稲の収穫量が増加しただけでなく、水生生物が水田に戻ってきたことが何よりの証し。棚田群の環境が少しずつ、しかし着実に改善されていることが実感できるエピソードだ。

FFC処理された水が流れ込む水田には水生生物も増加。わずか15分でバケツいっぱいの貝が採れる。子どもたちが貝採りに夢中になる姿に、環境再生の一端が垣間見える

水の変化を敏感に察知してか、水鳥の飛来も目にするようになった。

一時的ではなく
未来を見据えた文化の継承を

現段階では棚田の一部の水系での取り組みだが、年々収穫量が減少していたという状況下で、FFC技術の導入後に収穫量が増加、さらに環境改善の顕著な傾向が見られたことで、この保全プ口ジ工ク卜に対する現地の人々の期待も大きく高まっている。

現にこうした状況に興味を示した別の水系の水田の持ち主から「FFCセラミックスを設置したい」と希望する声も上がってきている。

また最近ではFFCセラミックスによって処理された水源の水を、持参したボトルに入れて持ち帰る人もいるのだとか。

FFC製品を活用しながら現地の人々の健康や保健衛生、そして自然環境の改善などの活動をされている冨田さんご夫妻のご協力をいただき、『イフガオ棚田群保全プロジェクト』は着実に現地に浸透し始めている。
「一時的な改善を目的とした“対処療法”では意味がありません。未来を見据えた長いスパンで伝統的な生活文化を継承するという理念と目的意識が何よりも重要だと考えています」と赤塚社長。

環境を変え、収穫量を増やすことで働き手や後継者の育成を促進する。この地に根付いてきた持続可能な農法を守り、継承する。そうすれば自ずと美しい景観も維持されていくだろう。保全プロジェク卜の真の目的はここにあるのだ。

そして2017年4月。赤塚グループが取り組む『イフガオ棚田群保全プロジェクト』は、より広いエリアの環境改善を行うべく、次のステージへと展開していく。

その活動の実施にあたって大きな力になっているのは、フィランソ会員のあたたかい支援だ。
『イフガオ棚田群支援プ口グラム』によるスマイルポイント寄付という形で募った活動への寄付は2017年2月28日現在、210万スマイルポイントに到達。
その尊い志は水源へのFFCセラミックスの設置、水田でのFFCエースの散布などに使われる。

フィランソ会員の理解と支援が、再生への道を歩み始めたイフガオ棚田群と、その保全プ口ジ工クトの大きな後押しになっているのだ。

今後も現地の人たちと連携しながら、FFCテクノロジーを最大限に活用した棚田群保全活動を継続していきたいと赤塚社長。
心ある人々の想いとFFCという技術によって、傷ついた世界遺産が再び本来の美しい姿を取り戻す日はそう遠くはないはずだ。

フィリピン・ルソン島
コルディリェーラ行政地域イフガオ州ウハ地区(マニラより車で10時間)


2017年4月発刊『BOSCO 18号』掲載
文/柳沢敬法