美味、安心、そして高品質

理想の豆腐づくりと
地域の活性化のために、
FFCと歩む老舗の心意気

瀬戸内の穏やかな気候に恵まれた文化と工業の街、岡山県倉敷市に、大正5年創業の老舗の豆腐店『小幡商店』がある。
2000年にFFCテクノロジーを導入以来約20年、水と工場環境への徹底的なこだわりから生まれた絶品豆腐は、地元のみならず全国から高い評価を受けている。
理想の味を追求し続ける小幡美代子さんに話を聞いた。

FFCノンフィクションvol.9 「美味、安心、そして高品質」 (有限会社小幡商店:岡山県倉敷市)

2019年6月発刊『フィランソスタイル 25号』掲載


豆腐づくりは「水」と「環境」が命。
情熱とFFCへの信頼で守る極上の味

FFC導入初日にはもう工場の臭いが消えた

工場に一歩足を踏み入れると、甘く香ばしい大豆の匂いに包まれる。
子どもの頃によく食べた、町の豆腐屋さんの出来立ての豆腐の味の記憶がよみがえってきた――。

「豆腐づくりは水が命」と言われる。小幡商店も1日におよそ30トンもの水を使う。
そして、その水の質が味や品質から安全性まで、豆腐のすべてを左右するのだ。

「FFCの素晴らしさをもっと多くの人に知ってほしい」と語る専務の小幡美代子さん。小幡商店の工場はそのための〝教室〟でもある。

1999年に知人を通じてパイロゲンと出会った小幡さんは、本社セミナーで赤塚充良社長(当時)の理念に大いに共感。
翌2000年から豆腐製造にかかわるすべての水をFFCウォーターに変えた。

FFCを導入して最初に驚いたのは、工場内の臭いが消えたことだという。
油揚げづくりに付きものだったキツい油の臭いが、「導入後1日で、もう臭わなくなった」のだ。
「工場2階にある自宅の洋服ダンスのなかの衣類にまで臭いが付いていたのですが、それがピタリとなくなりました」。

FFCがもたらしたハイレベルの衛生環境

また、豆腐の製造過程では機械から大量のFFCウォーターの蒸気が発生。
「工場内に充満したその蒸気にさらされることで、天井や壁、床までがきれいになるんです」と小幡さん。

天井や壁に水滴が付きにくく、サビや油汚れも付着しにくい。工場内には衛生レベルの高い生産環境が整っている。

改めて工場内を見渡すと、その清潔さ、きれいさが際立っていることに気づく。
設置されている機械や器具などはよく見るとどれも使い込まれて年季の入ったものばかり。それなのに、すべてが新品なのではないかと思うほどピカピカと輝いている。

FFC導入後、工場で使われている機械は、水がかかることが多い下側(床に近い部分)からサビがなくなっていったという。

ふと上を見ると、天井から5つのパイロバスが吊るされていた。
FFCの蒸気がパイロバスに当たることで効果がより高まる――そのアイデアに唸らされる。

(左)製造工程で発生するFFCウォーターの熱い蒸気が、工場内の環境を整えてくれる。(右)天井から吊るされたパイロバス。参考にしたい活用アイデアだ。

次に見せてもらったのは、包装された豆腐を冷やす冷却槽だ。
槽に濁りのない澄んだ水がなみなみと張られ、給水口にも5つのパイロバスが設置されている。
水の手触りはさらりと滑らかだ。
実はこの水、2007年から12年間、ずっと変えていないという。しかも水質検査でも細菌が検出されていないのだ。
12年もの間、水が腐らない――FFCの効果を改めて実感させられた。

FFCウォーターで満たされた冷却層にはFFCパイロバスを設置。

さらに、油揚げをつくる作業場では「レンジフードの内側を触ってみてください」、言われるままに指で触れて、「ウソ!」――思わず声が出た。
油煙が直に当たる場所にもかかわらず、油のベタベタ感が微塵もない。
しかもこうした場所では不可欠な換気扇が設置されていない。「回さなくても油汚れが残らない」からだという。

油揚げやおからドーナツの製造に油汚れは付きもののはず。だがFFC導入後の作業場はピカピカ。換気扇がないことにも驚きだ。

小幡商店の豆腐づくりの根底を支える非常にレベルの高い衛生環境はFFCテクノロジーの導入によってもたらされているのである。
美代子さんの長男で小幡商店常務の小幡直樹さんも「熱い蒸気と冷たい冷却水、高温と低温でバランスよく使うことが、FFCウォーターを最大限に活かすポイントではないかと考えたんです」と語る。

FFCの導入から現在に至るまで、工場内や製品の検査結果はもちろん、FFCの活用による日々の環境の変化などのデータを大切にして管理・分析を続けているという小幡さん。
非常に高レベルな衛生環境は、FFCへの強い信頼と、積み重ねられたデータ、それを活かすための柔軟なアイデアによってもたらされているのだ。

豊かな風味と滑らかな食感
FFCがもたらす極上の味

FFC農法で育てられた国産大豆を、パイロゲンを加えたFFCウォーターで洗浄後、FFCウォーターに浸漬。
その大豆を砕いて加熱、さらに絞りにかけて豆乳とおからに分離。箱型の内側にパイロゲンを噴霧し、にがりを入れ、そこに濾した豆乳を勢いよく流し込んで固める。
箱型から水槽に出してカットし、水にさらしたのちに包装して再度冷却する――小幡商店の豆腐づくりでは、こうした製造工程のすべてにFFCとパイロゲンが活用されている。

型箱で成型した豆腐は、切り分けて水に晒してから包装する。もちろんこの水槽の水もFFC処理されている。

出来立てを試食させていただいたが、大豆の豊かで上品な風味、コクの深い味わい、まろやかでとろけるような舌ざわりとのどごしは、「これぞ、豆腐」と呼ぶにふさわしく、感動すら覚える逸品だ。

もうひとつ特筆すべきは、食の安全・安心面でのクオリティの高さだ。
小幡商店では定期的に商品の品質保持検査を実施し、商品の衛生管理を徹底している。
保健所の検査でも、工場設備の衛生面の向上はもちろん、生産される豆腐の細菌数が非常に少ないことが証明されている。
製造当日はもちろん、1週間を経過しても細菌がほとんど発生しない。まさに驚異的と言っていいだろう。

小幡商店のFFCによる徹底した衛生管理への取り組みと、そこから得られる驚くべきデータは、食品の安全性に目を光らせている行政関係者をも納得させている。
こうしたFFCによる豆腐づくりと衛生管理への取り組みが高く評価され、2015年に「東久邇宮記念賞」および「東久邇宮文化褒賞」を受賞。
2017年には倉敷市から「倉敷の老舗感謝状」を贈られた。市が作成した老舗紹介パネルには「FFCテクノロジー」と明記されている。
FFCが社会的に評価された証しとも言えよう。

倉敷市が作成した「倉敷の老舗紹介パネル」。FFCテクノロジーの文字がしっかりと明記されている。

近年は、その安全・安心な品質や衛生意識の高さから、小幡商店の豆腐は地元の保育園や小中学校の給食、病院での食事などに採用されるケースも増えているという。

地域活性化とFFCの普及、
二つの使命を持つ〝伝道師〟

現在、二人の息子さん(長男・直樹さん、次男・英明さん)とともに工場を切り盛りしている小幡さん。
実は、フィランソのリーダー会員としての顔も持ち、FFCやパイロゲンを地域に広く普及させる活動にも力を注いでいる。
「これまでは普及活動やセミナーで各地を飛び回り、本社セミナーにも200数十回は参加してきました」という小幡さんは、2016年にご主人が体調を崩されたのを機に、地元に軸足を据えた活動へと本格的にシフトした。

現在では、月1回会員を集めての『FFC料理会』を開催したり、地元の学校の社会見学や、企業の工場見学を受け入れたりと地域に根ざした普及活動を続けている。
小幡商店を見学してFFCの導入を決めた企業も数知れない。

また2018年夏に西日本が記録的豪雨による災害に見舞われた際には、地元会員たちとFFCエースを仕入れて被災された方々に配布する活動なども率先して行った。

「高校生の頃から『50歳過ぎたら地域のために活動したい』と決めていた」という小幡さん。「今は、FFCの素晴らしさを伝える〝伝道師〟の意識で活動しています。立場はほとんど〝赤塚グループの人〟ですね(笑)」と笑う。

小幡商店は小幡美代子さん(中)が専務を務め、直樹さん(右)、英明さん(左)兄弟が工場を切り盛りする。

FFCを導入して水を変えたことで、豆腐の製造工場に衛生的な環境が〝自然に〟築かれた。
地道な検査を継続して、FFCによって食の安全性が向上している事実も明らかになった。
何より、豆腐の味が、風味が、食感が、品質が驚くほどに高まり、お客さまに喜んでいただけた――。
その確かな実感が、FFCへの揺るぎない信頼となり、地域活性化とFFCの普及への努力を惜しまない小幡さんのエネルギーとなっているのだ。

昨今、健康志向が高まって大豆の栄養価を豊富に含む「豆腐」が改めて見直され、新しいニーズも生まれている。
それは同時に、厳しい低価格競争にもつながっている。
そうした時代のなか、小幡商店は薄利多売の大量生産ではなく、安全安心な質の高いオンリーワンの製品づくりの道を貫き続ける。
いいものは必ず残る。いいものは必ず評価される――赤塚充良会長がよく口にする言葉は、小幡さんが胸に刻む信念でもあるのだ。
小幡さんがつくる豆腐の深く豊かな味わいに、その熱い想いが込められているように思えた。


有限会社 小幡商店
〒713-8102 岡山県倉敷市玉島3-11-2


撮影/野呂英成 取材・文/柳沢敬法 写真提供/赤塚グループ