
親しきが
祝ひてくれし花いく束
カトレアは華麗にのびのびひらく ― 中野 菊夫
【現代訳】
親しい人たちが祝い、贈ってくれた幾束もの花束。その中で、カトレアは華麗にのびのびと花を咲かせている。
心に咲く花 102回 カトレア
中南米原産のカトレアは「洋ランの女王」と呼ばれ、芳香豊かに大輪の美しい花を咲かせることで知られています。
植物学者の牧野富太郎博士は、おひさまが昇る姿にも見立て、「ヒノデラン」という和名をつけました。 中南米原産のカトレアは、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル、エクアドルなどに分布しています。コスタリカなど、国花としている国々もあります。
毎年新芽を伸ばし、花をつけるカトレア。花の色が鮮やかで、香りがよく、大輪系品種は贈答品とされてきました。掲出歌の作者も、お祝い事で、親しい人たちから贈られたのでしょう。ブーケやコサージュなどにもよく利用され、人気があるカトレア。
春咲き(3月〜4月)、夏咲き(6月〜8月)、秋咲き(9月〜11月)、冬咲き(12月〜翌2月)など、品種がとても豊富です。色彩も桃色や紅色、深緋色、夕焼け色、淡黄色、天色(あまいろ)、紫色など、世界じゅうの大地や人々の心を彩ってきました。
「カトレアは夜明のごとく咲きにけり」(辻美奈子)、「カトレアや鎮魂の歌聞こえをり」(島元文)、「室咲のカトレア飾り客を待つ」(稲畑汀子)など、俳句でも多くの作品が詠まれています。
児童文学や楽曲などにも多く登場するカトレア。きっと、新たな時代にも世界じゅうのさまざまな人たちの心を豊かに潤してくれることでしょう。
さみしい思いをしている人たちの心の奥にも、色彩や香りで何かを語りかけてくれるカトレア。
地上にこの花を用意した神様の想いに心を馳せながら、「華麗にのびのびひらく」花を尊びたいと思います。
田中章義(たなか あきよし)さん

歌人・作家。静岡市生まれ。大学在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞。2001年、国連WAFUNIF親善大使に就任。國學院大學「和歌講座」講師、ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授も務める。『世界で1000年生きている言葉』(PHP文庫)の他、歌集『天地(あめつち)のたから』(角川学芸出版)、『野口英世の母シカ』(白水社)など著書多数。
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