対談 赤塚耕一×田中章義さん

自然や四季が育んだ美しい日本語は
世界に誇るべき私たちの宝ものです。

今回のゲストは、作家であり歌人でもあり作詞家でありと、日本語のプロ、言葉の専門家として幅広く活躍されている田中章義さん。赤塚社長とも旧知の間柄。旧交を温めつつ、美しい日本語を次の世代に残すために大人がなすべきことなどを語り合いました。

『BOSCO TALK』
赤塚耕一 ×田中章義さん(作家・歌人)


お互いが独身時代から付き合いのある二人。懐かしい話にも花が咲いた。

赤塚 ご無沙汰しております。

田中 こちらこそ、お久しぶりです。お子さんはお元気ですか。

赤塚 最近はかなりマセてきて、大人びた言葉や“あまり美しくない”言葉を使うようになりました。「そんな言葉、どこで覚えてきたの?」と驚かされることもたびたびで(笑)。友だち同士の会話でいろいろ覚えてくるようですね。

田中 うちも4歳の子が「ヤバい」と言ったときは驚きました(笑)。それまで家では使わなかった言葉を“手裏剣”のように投げてくるんです(笑)。一回一回、刺さった手裏剣を抜きながら、「大人の人たちと話すときはそういう言葉は使わないほうがいいよ」と、その都度訂正していますが。

赤塚 やはり幼稚園や学校に行くなど、社会とのつながりを持つようになると、子どもたちの言葉は変化してきますね。

田中 社会のつながりのなかで幼稚園児くらいになると言葉に関心を持ち始め、多少やんちゃな言葉や言葉のリズム感に反応し始めるようです。子どもは成長過程のなか、そうした関心や好奇心によっていろいろな言葉を使ってみたくなるのでしょう。

赤塚 子どもをとりまく言葉の環境も大きく変わっています。テレビや雑誌などのメディアの影響も大きく、インターネットや過激な描写のオンラインゲームなども低年齢化しています。そうした生活環境のなかで子どもたちがどんな言葉に触れるのかは、日本語文化に大きな影響がありそうですね。

田中 そのとおりです。子どもたちは感受性が強いため、日々使う言葉も周囲の環境に大きく左右されます。なかでもいちばん大きいのは、やはり家庭です。家でお父さんとお母さんが使う言葉、ママ友同士の会話などにとても大きな影響を受けているのです。

赤塚 子どものいちばん近くで、いちばん長く深く接しているのですから、親の存在は重要ですよね。親の言動が子どもの言葉を育てると言ってもいい。ところが最近では子ども以上に親の言葉が怪しくなっています。言葉には魂が宿るといいますが、家庭での言葉の乱れは子どもの心の乱れにもつながりかねません。まず親が普段から言葉を意識して使うべきですね。

「私たち大人こそ言葉を大事にしなければいけないのですね」と赤塚社長。

言葉には魂が宿るといいます。
子どもたちの言葉と心を乱さないように、
まずは大人が言葉遣いを 意識して正すべきですね。

いつも使う言葉が その人の品格をつくる

田中 そういう意味で、私は以前から常々「赤塚社長は美しい言葉を使われるな」と思っています。

赤塚 そうでしょうか? 自分ではあまり意識していないのですが。

田中 やはり普段の言葉遣いというのがその人の品格をつくりあげていくのですね。赤塚社長をはじめ、高い社会性を持つ方々とお話しするたび、そう実感しています。

赤塚 ありがとうございます。そうだとしたら、それは子どもの頃に家庭で祖父母の言葉に触れていたからかもしれません。今は核家族化で、子どもと祖父母が触れ合う時間が減っています。古きよき家族の形が大きく変わってきている。それも美しい日本語が失われつつある原因かもしれませんね。

田中 同感です。言葉は家族のなかで受け継がれていくもの。我が家は、父母と三世代で一緒に暮らしていますが、お年寄りが使うきれいな言葉に触れることは、子どもにとてもいい影響があります。

言葉には人を喜ばせる力がある

赤塚 田中さんは、お子さんに美しい日本の言葉を教えるために、工夫されていることはありますか。

田中 我が家では親子で手紙のやり取りをしています。まだ幼稚園児なので「おとうさん、おしごとがんばって」「ありがとう」くらいの簡単なものなのですが。言葉というのは「書き残される」ことでも、読んだ人をすごく喜ばせたり幸せな気持ちにしたりできるということを知ってもらいたいんです。

赤塚 素晴らしいですね。そうするとお子さんもできるだけお父さんが喜ぶ言葉を書こうとする。それが美しい言葉、あたたかい言葉という感性を育むのですね。

田中 はい。子どもの言葉は何気なく使っていても少しずつ乱れてしまいがち。それに気づかせ、修正していくのも親の役目です。子どもとの言葉のやりとりには、あえてひと手間ひと手間をかける。子どもが口にする食事に気を遣うように、子どもが口にする言葉にも気を配る。それが大切なのではないかと思っています。

赤塚 子どもが言葉を学ぶ場は、国語の授業だけではないのですね。

田中 私たちが日常何気なく使っている日本語は、先人たちが豊かな自然や美しい四季を感じながら生み出し、受け継いできた世界に誇るべき尊い宝ものなのです。

赤塚 自然から生まれ、自然のなかで磨かれる言葉。日本語は実に奥が深いですね。私どもも花や水、自然とともにある企業として、そこから生まれてくる美しい言葉を大切にする感性を忘れてはいけないと、改めて実感しました。

田中 はい。時代を超えて綿々と受け継がれてきた日本語、そこに込められた豊かさや美しさに気づかず、ただ使ってしまうのは、もったいないことなのだと思います。

赤塚 そうした美しい言葉を守り、次の世代へと引き継いでいくのも私たちの大きな責務なのですね。今日はありがとうございました。

「自然を繊細に表現してきた先人の感性を、言葉から感じてほしい」と田中さん。

言葉は家庭のなかで育まれ、受け継がれていくもの。
食べるものを気遣うように、子どもの言葉に気を配る。
それも親の役目なのです。


田中章義(たなか あきよし)さん

作家・歌人。1970年静岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。大学一年在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞。2001年国連WAFUNIF親善大使に就任。2012年以降NHK中部地方番組審議会委員を務めるなど、ラジオ・テレビでも活躍。 著書に『世界で1000年生きている言葉』 (PHP文庫)、絵本『野いちごのたからもの』(東京新聞出版局)など多数。

田中さんの近著。左から『野口英世の母シカ』(白水社)、『十代に贈りたい心の名短歌100』(PHP研究所)、『天地のたから』(KADOKAWA/角川学芸出版)。

2015年10月発刊『BOSCO 12号』掲載
撮影/与儀達久 取材・文/柳沢敬法