星澤幸子の和食のチカラ 2025年6月- 7月 夏の大根メニュー
食欲が落ちる夏、猛暑は大根レシピで乗り切ろう
大根の旬と言えば冬、12月から2月ごろを思い浮かべる方が多いと思います。ところが、現在では品種改良が進み、夏でもおいしい大根が収穫されるようになりました。スーパーの野菜売り場には1年を通して大根が並んでいます。
私たちが、スーパーなどでよく見かけるものは青首大根と呼ばれる品種です。葉の部分に近くなるにつれて青くなっているのが特徴で、ナマで良し、煮て良し、焼いて良しと幅広いレシピに重宝する食材です。
和食に欠かせない野菜だけあって、京都原産の聖護院(しょうごいん)大根や鹿児島原産の桜島大根(ともに丸くて大きいのが特徴です)、細くて小さめ、関西のお雑煮には欠かせない奈良の祝い大根など日本各地で伝統野菜としての大根が栽培されています。
今回、あえて夏に大根のレシピをご紹介するのは、大根に含まれている消化酵素に注目してほしいからです。驚くほど早く梅雨が明けて、猛暑が予想される今年の夏は、例年以上に食欲の減退が心配されます。そんな時こそ、大根に含まれる消化酵素に活躍してもらいましょう。
大根の白い部分には、ジアスターゼ(アミラーゼ)やプロアテーゼ、リパーゼといった消化酵素が豊富に含まれています。ジアスターゼはデンプンを糖に分解する消化酵素で、消化不良を解消し、さらには胃酸をコントロールしていわゆる胃もたれや胸やけを防いでくれる働きがあるので、市販の胃腸薬にも使用されている成分です。また、プロアテーゼはタンパク質を分解し、肉や魚を柔らかくしてくれます。さらにリパーゼは脂肪を分解する酵素であり、脂肪の消化を助けてくれるので、肉料理や焼き魚に大根おろしを添えるのは、とても理にかなった食べ方なのです。
夏場の大根は、辛味が強いと言われますが、それは、乾燥や害虫などの影響で大根がストレスにさらされ、自らを守るために辛み成分を多く生成するためと言われているそうです。その辛み成分、イソチオシアネートは、切ったりすりおろすことで生成され、解毒作用や抗酸化作用、抗菌作用が期待されるありがたい成分でもあります。
ご紹介するレシピは、大根にカイワレ大根を加えて、大根おろしのソースでいただく「大根づくしサラダ」と、ショウガの風味と甘辛さが減退した食欲を刺激する「大根のうま辛煮」です。
付け加えておきたいのは、大根はその葉の部分にもとても栄養があるということ。βカロテンやビタミンC、ビタミンK、カルシウム、鉄分、カリウム、さらに食物繊維も含まれているので、炒めたり、味噌汁の具にしたり、漬物にしたりと積極的にお料理に取り入れましょう。
今年の猛暑は、大根を味方につけて上手に賢く乗り切りたいものです。
猛暑日に食べたい食欲増進サラダ
大根づくしサラダ

【材料】(4人分)
大根 200g
カニかまぼこ 50g
糸寒天 5g
かいわれ大根 1パック
【おろしソース】
大根おろし 100g
しょうゆ、酢 各大さじ2杯
白ゴマ 大さじ1杯
オリーブオイル 大さじ1杯
パイロゲン 大さじ1杯(約5.5ml)

【作り方】
- 大根は皮をこすり洗いして、少し太めの千切りにします。カニかまぼこは粗くほぐし、糸寒天は水で戻してしぼっておきます。かいわれ大根は根をはずして、材料を合わせて器に盛ります。
- ボウルに軽く水気を切った大根おろし、調味料、半ずりにしたゴマ、オリーブオイル、パイロゲンを入れて混ぜ、サラダにかけます。

大根は食べ応えを考えて少し太めの千切りに。

大根おろしソースの仕上げにはパイロゲンを。

カニかまの赤とカイワレ大根の緑がアクセントになるように盛り付ける。
ショウガ風味と甘辛さが食欲をそそる
大根のうま辛煮

【材料】(2人分)
大根 300g(4切れ)
豚挽き肉 100g
ショウガ 1片
油 大さじ1杯
水 カップ1杯
【調味料】
しょうゆ 大さじ2杯
てんさい糖、酒 大さじ1杯
豆板醤 小さじ1/2杯
パイロゲン キャップ1杯(約5.5ml)

【作り方】
- 大根は3cmのぶつ切りにします。米のとぎ汁をひたひたに入れ、串が刺さるまで下茹でして洗います。
- 鍋に油を熱して、ショウガのみじん切り、豚のひき肉を入れて炒めてから調味料とパイロゲン、水、大根を入れて20分煮ます。
- 大根の上下を返して冷めるまで置いて味を馴染ませます。

米のとぎ汁で下茹でした後に冷水で洗う。

ショウガのみじん切りと豚のひき肉をよく炒める。

炒めたひき肉に調味料とパイロゲンを。
星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん

料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。
星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com