心に咲く花 97回 節分草

林床の
落葉や小石押しのけて
節分草の芽は出るという ― 前田康子

【現代訳】
冬から春先にかけて白い可憐な花を咲かせる節分草。林床や林縁、山裾など、落葉樹林の日陰の環境を好む節分草は華奢で控えめに見えるのに、落葉や小石さえも押しのけて新芽を伸ばすという。その生命力の豊かさよ。

心に咲く花 2026年97回 節分草


昭和天皇も「せつぶん草さく山道の森かげに雪はのこりて春なほさむし」という御製をお詠みになるなど、多くの人々に愛される節分草は日本固有種です。
2月から3月頃に咲く早春を知らせる花としてとても人気があります。けれども、近年は乱獲や地球環境の悪化で激減し、すでに絶滅危惧II類となっています。

2センチ前後の白い花はとてもかわいらしく、見る人を笑顔にしてくれる節分草。時に大群落を形成し、一面に白い花を咲かせる様子をぜひ一度は生で見たいなあと思っています。広島県庄原市、山口県岩国市、兵庫県丹波市などに群生地として知られる場所があります。

花言葉は「気品」「光輝」「微笑み」「人間嫌い」などが知られています。冬のまだ寒い時期にも咲く姿は確かに「気品」もあり、「光輝」で、大地からの「微笑み」も感じさせてくれます。人間が盗掘したり、乱獲したりすることで、さらに節分草が「人間嫌い」になってしまわないことを願うばかりです。

掲出歌にあるように、「落葉や小石を押しのけて芽は出る」という節分草。小さな花を咲かせる植物の力強さ、早春の大地の豊潤さを思わずにはいられません。晩秋から冬に、地中深くにある黒褐色の塊茎(かいけい)から白い芽を伸ばし始め、冬の終わりから白い花弁のような萼片(がくへん)を5枚開きます。

準備期間のたいせつさ。芽を出す際には小石さえも押しのける逞しさとエネルギー。寒い季節にも着実に春への準備をしている節分草には教わることが多いのだと思っています。
寒さの中でも着実に花を咲かせる節分草に励まされ、全国各地で受験生たちもすばらしい進路を得ることができますように。


田中章義(たなか あきよし)さん

歌人・作家。静岡市生まれ。大学在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞。2001年、国連WAFUNIF親善大使に就任。國學院大學「和歌講座」講師、ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授も務める。『世界で1000年生きている言葉』(PHP文庫)の他、歌集『天地(あめつち)のたから』(角川学芸出版)、『野口英世の母シカ』(白水社)など著書多数。

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