対談 赤塚耕一×尾崎明弘さん

家に街に、花と緑があふれている、
そんな心豊かな暮らしを届けたい。

今回の対談のゲストは、東京都練馬区でガーデンセンター「オザキフラワーパーク」を経営する尾崎明弘さん。
まるで植物園かと見まがう広大な店内には、花はもちろん盆栽や観葉植物、エアプランツから観賞魚まで、ありとあらゆる園芸用品が揃い、首都圏最大級のスケールを誇っています。実は同世代の赤塚社長と尾崎さんは、15年近く交流が続く旧知の仲。お互い良く知る間柄のリラックスムードのなか、園芸業界の未来について語り合っていただきました。

『BOSCO TALK』
赤塚耕一 ×尾崎明弘さん((株)オザキフラワーパーク 代表取締役)


世界の園芸業界に認められた
IGCA日本大会の成功

赤塚 尾崎さんとはもう15年来のご縁になりますが、お付き合いがグンと深まったのは、やはり8年前のIGCA(国際ガーデンセンター協会※)日本大会でしたね。

尾崎 はい。私は1994年のスカンジナビア大会に日本人として初めてIGCAに参加して以来しばらくお休みしていたんです。でも2010年に初めて日本で大会を開催することが決まり、その準備のために2009年のイギリス大会から復帰しました。その年、赤塚社長はIGCAの理事になられたんですよね。

赤塚 ええ。ですから日本大会では、理事をしながら実行委員長もやることに。その時に旧知の尾崎さんにバスリーダー(国内でのアテンド役)をお願いしたわけです。

尾崎 あのときは本当に大変でした。来日した世界17カ国の約180人と国内参加者を連れて6日間、日本国内のガーデンセンターや市場、植物園などを視察して回ったわけですから。案内する側の舞台裏は、てんやわんやの大騒ぎでしたね(笑)。

赤塚 そうした尽力のおかげで、参加者の方々に日本の園芸文化や園芸業界の取り組みをしっかり感じていただけた素晴らしい大会になりました。

尾崎 当時はまだ、世界の園芸業界において日本は〝未知の国〟でしたが、大会の成功によって一気に日本の存在が認知され、高く評価されたことに大きな意義があったと思います。

赤塚 その後、2012年に信頼できる“相棒”をということで、尾崎さんに日本代表であるアドミニストレーターになっていただきました。

尾崎 それからずっと二人三脚でやってきましたね。赤塚社長はいまや、IGCAの会長ですし。

赤塚 はい。任期は2019年までです。そしてその後の2021年には、2回目の日本大会が開催されることも決まりました。

尾崎 前回の好評を受けての2回目ですから、より高いクオリティが求められますね。

赤塚 尾崎さんには今回もご協力をお願いしたいと思っています。

「次回のIGCA日本大会の成功が、世界の園芸業界における日本の地位向上、日本の産業界全体のなかでの園芸業界の地位向上につながるはず」と赤塚社長。

※『IGCA(国際ガーデンセンター協会)』

(左から)赤塚耕一実行委員長によるIGCA2010日本大会プログラム開始のベル。尾崎明弘社長に感謝状贈呈。レッドヒル ヒーサーの森でバーベキュー。IGCA日本大会にご参加いただいた皆様と記念撮影。

世界中の園芸専門店の情報交換と相互発展を目的として設立。現在、世界17カ国の園芸団体が加盟し、年一回世界大会を開催。2018年、赤塚耕一が会長に就任(任期は2019年まで)。
2010年に開催されたアジア諸国初のIGCA日本大会には、世界各国のガーデンセンターのオーナーら約230名が参加。オザキフラワーパーク、赤塚植物園等を来訪・視察した。2021年には2度目の日本大会が開催される。(写真は前回の日本大会当時)

園芸業界が置かれた厳しい状況を打破するために

赤塚 尾崎さんは以前オランダで花屋さんを経営していたとのこと。そんな尾崎さんの目には、世界レベルで見た現在の日本の園芸はどう映っていますか。

尾崎 盆栽や日本庭園といった日本固有の園芸文化は海外でも評価が高いですね。近年では国内よりもむしろ海外のほうが関心を持っているようにも思えます。ただ課題はライフスタイルへの浸透、定着という部分でしょうね。

赤塚 花のある暮らしを考える上でポイントとなるのは、人々と花木のいちばん身近な接点となる花屋さんやガーデンセンターの存在だと思うのですが。

尾崎 おっしゃるとおりです。ただ園芸業界、とくに花屋さんやガーデンセンターなどの小売業が直面するビジネス環境が厳しくなっています。原因のひとつには、若い人の間でのお中元やお歳暮など贈答文化の衰退が挙げられるでしょう。それに伴ってフラワーギフト需要も停滞しており、それが小売業に大きく影響しているんです。今の日本で浸透している〝花を贈る機会〟は唯一、母の日くらいでしょう。

赤塚 ヨーロッパでは古くから花を贈る習慣があったのに対して、日本で人々が花を贈るようになったのは戦後、欧米文化のひとつとして洋花が入ってきてから。実は私どもの会長でもある赤塚充良が業界に先駆けて洋ランの宅配を始めたのですが、それがここ40~50年くらいのことです。そう考えれば日本におけるフラワーギフトはまだ、文化として過渡期なのかもしれません。

尾崎 厳しい現状を打破するには、まず「花を贈る」「花を買う」といった文化そのもののPRが重要になります。ただ、フラワーバレンタイン、いい夫婦の日、敬老の日など、業界でも花を贈る機会の提案に取り組んでいますが、なかなか難しい。しっかりコストをかけて、さまざまなメディアを使って、もっと積極的にアピールしていく必要があると思います。

赤塚 日本は既存のものと新しいものを融合させるのが得意ですから、洋花文化と日本庭園文化の両方の良さを両立させて暮らしに取り入れていくことも可能なはず。私たち、そして若い世代が先頭に立ってそれに取り組まなければいけませんね。

地域や人々が花を愛する心を共有する。
そんな社会づくりのためにも
園芸業界の今後の取り組みは重要ですね。

「花のある暮らし」提案の最前線としての店舗づくりを

赤塚 日本に花のある生活文化を浸透させていくには、やはり東京からのトレンド発信は欠かせない要素だと考えます。その意味でも、首都圏最大級の規模を誇るオザキフラワーパークさんの存在はすごく大きいと思うのですが、尾崎さんが考える店づくりや経営ビジョンについてお聞かせください。

尾崎 花のある暮らしを広げていくには、多くの方々にとって最初の接点となるだろう園芸小売り店の存在が欠かせません。生活のなかで花や緑と縁遠くなっている人たち、とくに若い世代をどうやって振り向かせるか。そのためにはどんな店舗が求められているのか。試行錯誤しながら常に店舗の改装やリニューアルを重ねています。

赤塚 メインフロアを植物園やジャングルのような独自の内装にしたのもその試みのひとつですね。

尾崎 はい。今の人たちは直感をすごく大事にしています。ですから花を並べて育て方のプレートを貼って……といった従来の店づくりだけでなく、来店されたお客さまの直感に訴えかけるようなインパクトのある空間をつくろうと。

赤塚 体感型の店づくりということですね。

尾崎 そうです。来店されたお客さまからは「うわ~、すごい!」「うわ~何これ、キレイ!」という歓声があがるんですよ。花と緑の空間に足を踏み入れたときに感じた興奮と驚き、この「うわ~!」のひと言を大事にしたい。まずはお客さまの心のなかで花や緑への興味を育てていく。すぐに売上増とはならなくても、その興味がやがて「我が家にも何かひとつ花を置いてみよう」につながっていくんです。

「ネットでも情報は手に入るけれど、花への関心度の向上には実物を目で見て、触れて、匂いを嗅いで……という実体験が大事。だからこそガーデンセンターの存在は重要なんです」と尾崎さん。

赤塚 おっしゃるとおりですね。でも、新しい試みを始めるときは大概そうであるように、最初はいろいろと批判もあったのではないですか?

尾崎 ええ。「こんな陳列方法では商品が見えにくい」とか「手に取りにくい」とか言われましたね。先代でもある父親にも反対されましたし。でも従来とはまったく違う視点を持たないと、この厳しい状況を変えられない。そう信じて自分のやり方を貫いています。おかげさまで業界全体が大変ななか、店の業績も右肩上がりなんです。

赤塚 強い想いを持って新しい試みを実践され、しかもしっかりと実績を上げている。尾崎さんの取り組みは同業の方々にとって大いに刺激になるし、また学ぶところも多いでしょう。素晴らしいと思います。

ガーデンセンターというのは、
心豊かな世の中の形成のために
非常に重要な〝インフラ〟なんです

ガーデンセンターを基点に、花と緑あふれる社会形成を

赤塚 尾崎さんがガーデンセンターの経営の先に描く夢はどういうものですか。

尾崎 最終的に目指しているのは、花と緑があふれる「街」と「社会」の形成です。個人や家庭レベルから社会レベルにまで、心豊かな自然環境づくりを広げていきたいですね。

赤塚 花のある社会は人々の心をやさしく、安らかにする。花のある暮らしはすべての人を笑顔にする。これは私のなかで揺るぎのない信念なのですが、尾崎さんの想いとも相通じるものがありますね。とても共感します。

尾崎 ヨーロッパに行くと街全体に花が咲き誇っています。当たり前ですが、花は勝手には生えてきません。人々の「花を育てよう」「街をキレイに彩ろう」という想いが共有されているからこそ実現する光景なんです。

赤塚 そうした想いの共有が生まれれば、日本の街でも決して不可能ではないですよね。

尾崎 はい。人々にそうした想いを持ってもらう。その入り口になるのがガーデンセンターや花屋などの小売店なんです。ヨーロッパでは小さな街でも、ひとつはガーデンセンターがあるのが当たり前になっています。ガーデンセンターというのは社会形成のために非常に重要な〝インフラ〟のひとつなのだと私は思っています。

赤塚 地域とそこに住む住民が一緒になって街に花と緑と、心豊かな暮らしをもたらす。私ども赤塚植物園では“一人の健康から地球の未来まで”を理念として事業に取り組み、その中で地域に根ざした園芸売店「アカツカFFCパビリオン」や「レッドヒル ヒーサーの森」を通して、尾崎さんと同じように人々に花や緑のある暮らしを提案しています。また水の技術「FFCテクノロジー」をフィランソ会員の皆さんとともに世の中に広めることで人々の健康と地球環境に貢献しています。花とともに育ち、水とともに生きる。そんな社会の実現には、私たち園芸業界がもっと一枚岩になってさまざまな課題に取り組む必要があります。

尾崎 そういう意味でも、次回のIGCA日本大会は重要になるでしょう。業界のなかにも現状への強い危機感を持つ若い人たちが大勢います。そうした若い世代とのつながり、意識や情報の共有は業界の未来を考える上ですごく大事だと思います。

赤塚 次の日本大会が開催される2021年は、東京オリンピックの翌年。世界中から日本に注目が集まっているときでもあります。この大会を絶好のチャンスと考えて、業界全体の活性化に活かしていきたいですね。尾崎さんには引き続きご協力をいただくことになりますが、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

2021年のIGCA日本大会開催に向けて、最近では月に一度は会っているというふたり。園芸業界を担うリーダーとして、お互いによき相棒として認め合っている。


尾崎明弘(おざき あきひろ)さん

1969年東京都生まれ。大手ホームセンター勤務を経て、1993年Ozaki Flower Park Europe B.V. 設立、オランダ・アムステルダムにて輸出入業務を行う。1995年オザキフラワーパーク・アムステルダム支店開店。2007年株式会社オザキフラワーパーク代表取締役社長に就任。地域に密着した業態開発を進め、専門店としての深い品ぞろえを強みにガーデンセンターを運営している。また「新しい園芸を考える会」の理事や、IGCAの日本代表アドミニストレーターとしても活躍されている。

●オザキフラワーパーク

創業57年の歴史を持ち、広さは駐車場を含め約3000坪という首都圏最大級のガーデンセンター。店内は4つのゾーンに分かれ、園芸の他にもペット用品、日用品、生花、造園など圧倒的な品揃えとサービスを誇る。敷地内にはおしゃれなカフェも併設されている。2015年には各都道府県の花市場が推薦する花専門店『五つ星認定店』に認定された。

〒177-0045
東京都練馬区石神井台4-6-32
☎ 03-3929-0544
営業時間等は下記ホームページをご覧ください。
https://ozaki-flowerpark.co.jp/

 

2019年2月発刊『filanso style 24号』掲載
撮影/野呂英成 取材・文/柳沢敬法