「みそ」は世界最高の調味料

星澤幸子の和食のチカラ 第2回 みそ


「和食のチカラ」第2回は、体にいい発酵食品、調味料として今、世界中から注目を集める「みそ」を取り上げます。一日一杯のみそ汁は、血管年齢を10歳も若返らせるという実験結果もあるそうです。みそ汁以外にも上手に食事に取り入れることで、大切な家族の健康を守りましょう。


私たちの知る「みそ」の先祖は飛鳥時代の僧侶によって、中国からもたらされたと言われています。

その後、日本の国土で独自の発酵食品として発展し、当初は大変高価な物だったそうですが、室町時代になると一般市民の間でも自家醸造が始まり、江戸時代には工業的に生産されて全国に流通するようになりました。

「みそ汁一杯三里の力」「みそは医者要らず」「みそ汁は朝の毒消し」「着物、質に入れてもみそ作れ」等々、みそがからむ諺も数多く残されています。それほど、当時から生活と馴染み深く、健康のためにも日本人とは切っても切り離せない国民食だったのでしょう。

鎌倉時代にはご飯とみそ汁、漬物といった「一汁一菜」という武士の食習慣が確立し、その後、おかずも付いて伝統の「一汁三菜」に発展します。

みそ汁を飲まないなんてもったいない!

現在日本国内には約1700社のみそメーカーがあります。外国人にも広く浸透しており、好きな日本料理の上位にみそスープがランクインしています。2000年、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗した宇宙飛行士・若田光一氏に、宇宙で私の提供したみそ汁を飲んでいただいたことも、みそ汁を世界に知ってもらうための良い機会になりました。

みその海外輸出も目覚ましく、1990年から2009年までで約3倍に増え、海外にみその工場まで出来ているのですが、国内での購入額は2000年から2014年の間に3分の1に減ってしまっているのが実状です。

世界無形文化遺産の「和食」に欠かせないはずのみそ汁が、家庭で作られていないのが現実なのです。高校生になるまで家でみそ汁を飲んだことのない子がいるとも聞きます。大気汚染の激しい今こそ、デトックス効果の高いみそを活用する必要があるのではないでしょうか。

みそは、大豆に含まれる質の高いたんぱく質を麹菌で発酵させて出来ています。そのため、大豆そのものを食べるよりはるかに消化吸収しやすくなり、アミノ酸などの旨み成分や各種ビタミンが多量に生成され、ミネラルやヨウ素、必須脂肪酸などがバランス良く含まれています。脳卒中、認知症、心臓疾患のみならず、癌にも効果があるというから驚きです。もう、食べない理由はありませんね。

今回は、誰もがいつでも手軽に作れる「即席みそ汁」もご紹介しています。「飲む点滴」とも言われているみそ汁を毎日飲んで、みその料理を実践していただき、ぜひ健康な生活をお送りください。

≪ねぎみそ≫

~古くからの献立に親しみを込めて現代風に~

【材料】(作りやすい分量)

長ネギ 1本/ごま油 大さじ1杯/白ごま 大さじ2杯 [調味料]みそ 大さじ4杯/てんさい糖 大さじ2杯/みりん 大さじ1杯/パイロゲン 小さじ1杯
[調味料]
酒 大さじ2杯/しょうゆ 大さじ2杯/パイロゲン 小さじ1杯

【作り方】

  1. 長ネギはみじん切りにします。
  2. フライパンにごま油を熱して長ネギを入れて炒め、しんなりしたら調味料、パイロゲン、半ずりにしたごまを加えてツヤが出るまで混ぜながら炒めます。
  3. 冷めたら保存容器に入れ、ご飯やそばにつけたり、野菜に付けていただきます。

≪旬の野菜のけんちん汁≫

~野菜の力とみそのうま味の集大成~

【材料】(4人分)

大根 200g/ニンジン 小1本/ゴボウ 小1本/茹でブキ 100g/こんにゃく 1/2丁/干しシイタケ 3枚/油 大さじ1杯/木綿豆腐 1/2丁/水 カップ4杯/昆布 10cm/かつお節 ひとつかみ
[調味料]
みそ 大さじ4杯/みりん 大さじ1杯/パイロゲン 小さじ1杯

【作り方】

  1. 大根、ニンジン、ゴボウは皮をこすり洗いして乱切りにします。ゴボウは切ったらすぐに水に浸して、何度も水を替えてアク抜きします。
  2. フキは斜め薄切り、こんにゃくは塩で揉んで水で洗い、スプーンでひと口大にします。干しシイタケは戻して4つ切りにします。
  3. 鍋に油を熱して切った材料を入れて炒めます。全体に油が馴染んだら 分量の水、短冊に切った昆布、細かく揉んだかつお節を入れて、野菜が軟らかくなるまで煮ます。
  4. 調味料とパイロゲンを入れて5分ほど煮てから、豆腐をちぎりながら加え、豆腐が温まったら器に盛ります。

≪魚のアラと根菜のみそ汁≫

~魚のうま味を最大限に活かす食文化ここにあり~

【材料】(4人分)

魚のアラ 300g/酒 大さじ2杯/大根 200g/長ネギ 1/4本/水 カップ4杯/昆布 4cm
[調味料]
みそ 大さじ4杯/塩 少々/パイロゲン 小さじ1杯/一味唐辛子 少々

【作り方】

  1. アラは少し大きめに切って酒を振りかけ、30分ほどおきます。大根は短冊に切り、長ネギは小口切りにします。
  2. 鍋に湯を沸かしてアラを入れ、表面が白くなったらすぐにザルにあげます。
  3. 鍋にアラ、分量の水、短冊に切った昆布、大根を入れて火にかけ、大根が軟らかくなったら調味料、パイロゲンを入れてひと煮立ちさせ、ネギを入れて火を止めます。
  4. 好みで一味唐辛子を振っていただきます。

≪即席みそ汁≫

~誰でも手軽に、毎日飲めますように!~

【材料】(1人分)
みそ 大さじ1杯/かつお節 ひとつまみ/とろろ昆布、乾燥わかめ、糸寒天、麩、海苔 等 各適量/熱湯 約カップ1杯

【作り方】
お椀またはカップにみそを入れ、細かくもんだかつお節、好みの具材を入れ熱湯を注いでよく混ぜます。


星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん

料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。

星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com


2016年7月発刊『BOSCO 15号』掲載記事
撮影/大滝恭昌