日本が誇る発酵食品文化の主役、糀の力を味方につけよう

星澤幸子の和食のチカラ 第7回 塩糀・しょうゆ糀


和食に欠かせない調味料、しょうゆ、味噌は糀菌によって作られます。さらに日本酒や焼酎も。
糀菌は古くから私たち日本人の食生活、そして健康を守るために大きな役割を果たしてきました。
糀の持つさまざまな健康効果をぜひ食卓に活かしてください。


和食に欠かせない調味料、しょうゆ、味噌は糀菌によって作られます。さらに日本酒や焼酎も。糀菌は古くから私たち日本人の食生活、そして健康を守るために大きな役割を果たしてきました。糀の持つさまざまな健康効果をぜひ食卓に活かしてください。

糀は蒸した穀物に糀菌(糀カビ)を繁殖させて出来た発酵食品です。発酵とは酵母、細菌、カビなどの微生物が、有機化合物を分解してアルコール、有機酸、炭酸ガスなどを生じる現象のことで、人間にとって有効な物質を作り出すことを発酵と言います。都合の悪い微生物が増殖すると腐敗、と聞くとちょっと勝手な気もしますが……。

「ニホンコウジカビ」が日本酒、醤油、味醂、味噌、甘酒を作り、「ショウユコウジカビ」が醤油、味噌を作ります。漬物、甘酒、米酢も全て発酵食品です。中国にも糀で作られる調味料等がありますが、穀物を蒸さずに粉にして練って繁殖させた「クモノスカビ」を使って作るため、国ごとに違う発展をしてきた様がうかがえます。

日本独自の食文化は日本の糀菌によって守られ発展してきたのでしょう。その歴史は古く、米が伝来した紀元前に遡ると言われています。平安時代の末期には糀屋が存在し、酒、味噌、醤油の醸造に使用されていました。味噌に肉や魚、菜物や香辛料などを漬け込み、熟成させた「なめもの」というおかずや、鰹味噌、鳥味噌、時雨味噌、生姜味噌などが作られていたようです。

杜氏さんの手が白くてきめ細かいわけ

糀には酵素が30種類以上含まれ、元々、米にはなかった成分が400以上も作られると言われ、健康維持や、老化防止を促す物質を作り出すことが解ってきました。

デンプンを糖に変えて甘みを出すアミラーゼ。たんぱく質をアミノ酸に分解して、旨味を出すプリティアーゼ。脂肪を脂肪酸グルセリンに分解させるリパーゼなどの働きが注目されています。ただ発酵食品を食べるだけで私達にとってうれしい効果がいくつも出てきます。消化を助け、整腸作用を高めるデトックス効果。また腸内細菌の働きを活発にして、免疫力を向上。メラニンの生成を抑えるコウジ酸による美白効果。だから杜氏さんの手は白くてきめ細かいのだとか。甘酒などはまさに食べる美容液ですね!

保存性を高め、美味しく、健康まで助けてくれる「国菌」(2006年、糀菌は「国の菌」と呼ばれるようになりました)ですが、多湿で、一年を通して自然の表情を変える日本の四季に、寄り添い生きる糀菌は、私達と同じ故郷に住む古き良き仲間なのです。今回ご紹介する塩糀、しょうゆ糀は簡単、手軽に作れて、使い勝手も抜群。塩や醤油を使う要領でご利用ください。

≪塩麹・しょうゆ麹≫

≪塩糀≫

~つけたり、和えたり使い方様々~

【作り方】

  1. ボウルに乾燥糀をほぐして入れ、塩と水、パイロゲンを入れてよく混ぜます。
  2. 熱湯で消毒したビンに入れてフタをのせ、1日1回混ぜながら常温で1週間置きます。
  3. 発酵して滑らかになったら冷蔵庫で保管します。

≪しょうゆ糀≫

~減塩しながらしょうゆのうま味倍増~

【作り方】

  1. ボウルに乾燥糀をほぐして入れ、しょうゆ、パイロゲンを入れて混ぜます。
  2. 熱湯で消毒したビンに入れてフタをのせ、1日1回混ぜながら常温で1週間置きます。
  3. 糀がしょうゆとなじんできたら、冷蔵庫で保管します。

≪塩糀のコラーゲン水炊き≫

~手羽元をシンプルにうま味たっぷりと~

【材料】(4人分)

鶏手羽元 10本/塩糀 大さじ3杯/春菊 1束/長ネギ 1本/木綿豆腐 1丁/生シイタケ 3枚/くずきり 100g/昆布 10cm/水 2杯/酒大さじ 2杯/ポン酢 適量

【作り方】

  1. 手羽元に塩糀を混ぜて1~2時間置きます。春菊は水に浸してパリッとさせてから6~7cmの長さに切ります。
  2. 長ねぎは斜め薄切り、豆腐は大きめのひと口大、シイタケは石づきを取り、かさの真ん中にあれ目を入れます。
  3. くずきりは熱湯に浸して戻し、昆布は短冊切りにします。
  4. 鍋に分量の水と手羽元、昆布を入れて30分程煮ます。
  5. 他の材料も入れ、火が通ったものからお好みでポン酢をかけて頂きます。

≪大根の麹レモン漬け≫

~麹を大根にたっぷりと~

【材料】(4人分)
大根(正味)1kg/塩糀大さじ3杯/レモン大1個

【作り方】

  1. 大根は皮を剥いて2~3mmの厚さの薄切りにします。
  2. レモンは皮をこすり洗いして皮ごと薄く輪切りにします。
  3. ポリ袋に大根を並べ4、5枚ごとにレモンをはさみ塩糀を全体にかけて密封し手で揉んでなじませます。2時間程置いてしんなりしたらいただきます。

≪しめサバと大根の塩糀サラダ≫

~麹のみでしめサバのうま味を引き出す手軽な一品~

【材料】(作りやすい分量)
しめサバ 1枚/大根 200g/赤パプリカ 1/2個/しょうが 1片/水菜 50g/かいわれ大根 1パック
【調味料】塩糀 大さじ2杯/コショウ 少々/油 大さじ1杯

【作り方】

  1. しめサバは皮をむいて1cm幅に切ります。大根は皮ごと繊維にそって千切りにし、赤パプリカ、しょうがいもも千切りにします。
  2. 水菜とかいわれ大根は水に浸してパリッとさせてから3~4cmに切ります。
  3. ボウルに切った材料を全て入れて軽く混ぜ、合わせた調味料を加えてサックリ混ぜます。

≪塩糀の野菜ケーキ≫

~おやつも栄養満点!~

【材料】(作りやすい分量)
タマネギ 1/2個/じゃがいも 1個/ベーコン 3枚/コーン缶 小1個/枝豆 大さじ4杯/小麦粉 100g/ベーキングパウダー 小さじ1杯/米油 80g/てんさい糖 40g/塩糀 小さじ2杯/卵 2個

【作り方】

  1. 小麦粉にベーキングパウダーを加えて泡だて器で混ぜます(A)
  2. タマネギ、じゃがいもは1cm角に切って茹でて冷ましておきます。ベーコンも1cm角に切ります。
  3. Aに米油とてんさい糖を泡立て器で良く混ぜて、卵と塩麹を加えて更に混ぜます(B)。
  4. Bに玉ねぎ、じゃがいも、枝豆、コーン、ベーコンを入れ混ぜ、型に入れて空気を抜き、200℃のオーブントースターで15分、180℃に落として更に20分焼き、焼き色が付いたらアルミホイルを上にかけ完全に火を通します。
  5. 冷ましてから切り分けていただきます。

≪しょうゆ糀でそば寿司≫

~味付けはしょうゆ糀だけ!~

【材料】(作りやすい分量)
そば(乾燥) 400g/酢 大さじ2杯/キュウリ 1/2本/青じそ 8枚/卵 2個/てんさい糖、油 各少々/しょうゆ糀 大さじ2杯/わさび 少々

【作り方】

  1. そばは50gずつ取って端の方を糸できっちり束ねて丁度良い硬さに茹で、水にさらしてコシを出します。
  2. キュウリは千切りにし、卵はてんさい糖と油を入れて薄焼きにして千切りにします。
  3. まきすにのりを広げて、そばの束ねたところを切って、巻き終わり2cmを残し平面にのせます。青じそ、薄焼き卵、その上にキュウリ、しょうゆ糀、わさびの順にのせて、表面にパイロゲンを振りかけ、きっちりと巻き、巻き終わりを下にしてしばらく落ち着かせて1本を8等分に切ります。
  4. 同様にもう1本も巻きます。

 


星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん

料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。

星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com

 

 


2017年10月発刊『BOSCO 20号』掲載記事
撮影/大滝恭昌