
ピラカンサの
実を食べつくし鳥去りぬ
鳥は森なり つばさもつ森 ― 栗木京子(くりき きょうこ)
【現代訳】
ピラカンサの実を食べつくして、鳥は去って行った。思えば、鳥も森なのかもしれない。小さな森。翼をもつ森。
心に咲く花 103回 ピラカンサ
初夏に可憐な白い花を咲かせるピラカンサは、真夏の陽射しを浴び、光沢ある濃緑色の葉を耀かせます。 そして、秋には丸い果実が多数、緋色(ひいろ)に実り、鳥をはじめとした多くの生きものたちへの恵みとなります。12月、1月にも実をつけるピラカンサは冬場に多くの生きもののいのちを支えてくれる植物です。
世界各地で愛され、庭木や公園にもよく見られるピラカンサ。常緑で実の付きもいいピラカンサは縁起のいい庭木として好まれています。
そんなピラカンサを題材に、掲出歌を詠んだ栗木京子さんは、「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)」などの歌で知られる現代歌人です。角川短歌賞を受賞しています。「鳥は森なり つばさもつ森」と、鳥を小さな森に見立て、「鳥とは翼をもつ森」なのだと感性豊かにとらえた作品です。
ピラカンサの花言葉は、「愛嬌(あいきょう)」「燃ゆる想い」「豊穣(ほうじょう)」「希望」などが知られています。目の覚めるような鮮やかな紅(あか)い実をたわわに実らせるピラカンサ。
暑さにも寒さにも強く、特別な管理をしなくてもよく育つため、日本でも明治時代から広く普及しました。土質を選ばないため、庭木や生け垣として人気があります。ピラカンサの名前はギリシャ語で「火」を意味する”pyro”と「トゲ」を意味する”acantha”が由来なのだそうです。
時代も国境も超えた多くの人々の生活を彩ってくれるピラカンサは、今後も世界じゅうの人々の心を明るく照らしてくれることでしょう。児童文学にも多く登場するピラカンサ。なるほど、ピラカンサは絵本や童話を描きたくなる植物なのかもしれません。その実には、感性を豊かにしてくれる不思議な何かが含まれているのではないでしょうか。
田中章義(たなか あきよし)さん

歌人・作家。静岡市生まれ。大学在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞。2001年、国連WAFUNIF親善大使に就任。國學院大學「和歌講座」講師、ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授も務める。『世界で1000年生きている言葉』(PHP文庫)の他、歌集『天地(あめつち)のたから』(角川学芸出版)、『野口英世の母シカ』(白水社)など著書多数。
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