心に咲く花 59回 茶の花

茶の花にかくれんぼする雀かな  ― 小林一茶(こばやしいっさ)

【現代訳】
秋の終わりから、冬の初めにかけて、白色五弁のふっくらした小さな花を咲かせる茶の木。その花に近づく雀は、まるでかくれんぼをしているかのようだ。

心に咲く花 2023年59回 茶の花


茶の花が県花の静岡県に暮らしていると、まるで和菓子のようにかわいらしいこの時期の茶の花に魅せられます。散歩する幼稚園児たちの集団にも、思わず見せてあげたくなるような朗らかさ。初冬の大地がまるで童話画家の作品のように思える季節です。

そんな「茶の花」に戯れる雀を、「かくれんぼ」だと表現した俳人「小林一茶」の感性を紹介したくて、今回は和歌ではなく、俳句を紹介しました。

「やせ蛙負けるな一茶これにあり」「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」「雪とけて村いっぱいのこどもかな」「おらが世やそこらの草も餅になる」「亡き母や海見る度に見る度に」などの句を残した小林一茶。わかりやすい言葉で心の機微を詠んだ一茶の句は今も多くの人に愛誦されています。

「朝々や茶がうまくなる霜おりる」など、何句かの茶の句も詠んだ一茶。
他に、松尾芭蕉(まつおばしょう)は「茶の花に人里ちかき山路かな」、正岡子規(まさおかしき)は「からたちの中の茶の花あはれなり」、久保田万太郎は(くぼたまんたろう)「茶の花に今夕空の青さかな」という「茶の花」の俳句を残しています。

八十八夜などが話題となる「葉」と違って、どこか控えめに、けれども、ぬくもり豊かに大地を飾ってくれている「茶の花」。冬の季語のこの花のまぶしさ、輝きをぜひ多くの人たちにも知ってほしいと思います。

時代を超えて、令和の茶畑でも、雀が茶の花にかくれんぼをしています。茶の花と雀の微笑ましい物語が、いついつまでも続く、平和な日本でありますように。


田中章義(たなか あきよし)さん

歌人・作家。静岡市生まれ。大学在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞。2001年、国連WAFUNIF親善大使に就任。國學院大學「和歌講座」講師、ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授も務める。『世界で1000年生きている言葉』(PHP文庫)の他、歌集『天地(あめつち)のたから』(角川学芸出版)、『野口英世の母シカ』(白水社)など著書多数。

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