ほんとうに美味しい「ごはん」の研究 Part 2

メタボにならない!太らない! お米の食べ方新常識

近年、タンパク質、脂質と並ぶ3大栄養素のひとつでありながら、「炭水化物は控えたほうがいい」「低糖質、高タンパクのほうが体にいい」という説が増え、大好きなご飯を食べることに罪悪感を感じている人も多いかもしれませんが心配は無用! お米との上手なつきあいかたを考えます。

「お米を食べると太る」は大きな間違い

炭水化物はエネルギー源となり、タンパク質は筋肉などを作り、さらにビタミンなどは体調を整える働きを持っています。
炭水化物というと「太る!」と思い込んでいる人が多いのですが、実は太るのは炭水化物が原因ではありません。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」という詩をちょっと思い出してみてください。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ  (後略)

宮沢賢治という人は詩人・童話作家であり、同時に農学者でした。明治29年岩手県の花巻市(現在)に生まれ農学校の教師として働きながら、農民の暮らしに根ざす作品を数多く発表したのですが、この詩の中にある、

一日ニ玄米4合ト
味噌ト少シの野菜ヲタベ

というのは誇張ではありません。
4合といえば、米600g分。これに1.2倍以上の水を加えて炊くのですから、1.3kgほどの量になります。現代の生活から見ればかなり多いように思いますが、当時、農作業に従事している人や、兵士などは、これ以上食べることも珍しくなかったと言います。ただ、本当に米以外は宮沢賢治が書いているように、質素で量も少ないのが一般的でした。

玄米4合は、カロリーにして約2000kcal。
成人男性に必要とされるカロリーは2600kcalと言われていますから、米以外の摂取が少ないことを考えれば、決して多い量ではありません。総摂取カロリーの大半を主食である米から摂っていたということになります。

京大名誉教授で『結局、炭水化物を食べればしっかりやせる!』(日本文芸社)の著者でもある森谷敏夫先生は、こう話します。

「この時代に肥満も糖尿病も、問題にはなっていません。つまり炭水化物のとりすぎが肥満などにつながるわけではなく、十分な日常活動、運動を行っていればいくらお米を食べても問題はありません。しかも、玄米の場合には、タンパク質も、脂質も含まれていますから、質素であっても重労働をしながらでも生きていけたということ。
現在、日本人は食べ過ぎを心配して糖質制限をしようとするけれど、平均的な摂取カロリーは1800kcal。
しかし70年前の1946年、終戦直後の平均摂取カロリーはなんと1900kcalだったのです。食うや食わずの終戦直後、みんなガリガリに痩せていたときでさえ、これだけのカロリーを摂っていたのです。
摂取カロリーが減っているのに、太る理由、その最大の原因は、運動不足です!! スポーツという意味ではなく、日常的な運動、つまり、歩く、物を運ぶ、農作業をするといった運動が激減してしまったせいです」

糖質制限ダイエットはアブナイ!

しかも、「糖質」を悪者にするのは大きな間違いだと、森谷先生は続けます。

「糖質は脳のガソリンとして非常に重要なものです。体内でもあるていどは作り出せるのですが、脳のエネルギーとしては食事から摂らなければ絶対的に足りません。総エネルギーの約6割は糖質から摂るべきです」

では、なぜ「糖質制限ダイエット」がこれほど話題になっているのでしょう。

「もともと糖質オフダイエット、低糖質ダイエットというのは糖尿病の治療のためのプログラムです。糖尿病を発症している場合には糖質を制限する必要もありますが、単にダイエットのためにやってはいけません。
確かに糖質を制限すると体重は「5日で3kg」など、数日で急激に落ちるのですが、実は減っているのは体についている脂肪ではなくて、ほとんどが水分なのです。
炭水化物は体内で糖と繊維質にわかれますが、糖はそれぞれ3個の水の分子と結合してグリコーゲンという形で肝臓や筋肉に蓄えられます。糖質を制限すると、体はいわば非常食として備蓄していたグリコーゲンを使いますが、グリコーゲン1個につき不要になった水の分子が3個体内に出ていく。それで体重が落ちるのです。
しかし、体重が落ちたところで脂肪は減らないし、さらに糖質制限を続けると、脳はどんどんエネルギー不足となります。
すると、体は筋肉のタンパク質を使って脳のエネルギーにしようとするのです。脳を動かすために筋肉が減ってしまう。これ、恐ろしいことですよ」

体を動かし、きちんと炭水化物もタンパク質も摂る、脂質もちゃんと摂る。この「基本中の基本」に戻れば、ご飯を減らす必要などない、ということになります。

お米の栄養素を見直そう

あらためてお米に含まれる栄養素を見てみましょう。
ごはん1杯分(米65g程度)のカロリーは252kcal。これは時速8kmで40分ランニングを続けられるエネルギーに相当します。

そして含まれている栄養素は以下のようになります。

『五訂日本食品標準成分表』より

この数値は、玄米から糠と胚芽を取り除いて精米した「白米」の場合ですが、精米前の玄米になると栄養価はさらに高くなります。

100gあたりの栄養素を比較すると・・・・・

『五訂日本食品標準成分表』より

そのほか、葉酸、ビオチン、コリンなども玄米のほうがずっと多く含まれています

いきなり主食のすべても玄米にするのは、ちょっとむずかしいかもしれませんが、
Part1でもご紹介したように、3分づき、5分づき米を利用したり、白米と玄米を混ぜて炊いたり、料理によって玄米100%のご飯にするなどして、じょうずに玄米の持つ力を利用してください。
もちろん精米した白米を食べてはいけない、ということはまったくありません。

 

<ほんとうに美味しい「ごはん」の研究 Part 3>
いつものお米がびっくりするほど美味しく炊ける基本と裏技

<Part 1>毎日食べている「お米」のこと、どれだけ知っていますか?