心に咲く花 59回 茶の花
茶の花にかくれんぼする雀かな ― 小林一茶(こばやしいっさ) 【現代訳】 秋の終わりから、冬の初めにかけて、白色五弁のふっくらした小さな花を咲かせる茶の木。その花に近づく雀は、まるでかくれんぼをしているかのようだ。 心…
茶の花にかくれんぼする雀かな ― 小林一茶(こばやしいっさ) 【現代訳】 秋の終わりから、冬の初めにかけて、白色五弁のふっくらした小さな花を咲かせる茶の木。その花に近づく雀は、まるでかくれんぼをしているかのようだ。 心…
紫苑咲けば 四十日で雪が来ると 呟(つぶや)きし祖母も思い出の中 ― 佐藤ヨリ子 【現代訳】 秋の代表花のひとつ「紫苑」が咲くと、あと四十日で雪が降るとつぶやいていた祖母も、今はもう他界して思い出の中にいる。 心に咲く…
柿の実のあまきもありぬ 柿の実の渋きもありぬ 渋きぞうまき ― 正岡子規(まさおかしき) 【現代訳】 柿の実には甘いものもあれば、渋いものもある。実は渋いものこそ美味しいものだ。 心に咲く花 2022年57回 柿(かき…
鳳仙花ちりておつれば 小さき蟹(かに) 鋏(はさみ)ささげて驚き走る ― 窪田空穂(くぼたうつぼ) 【現代訳】 鳳仙花の花がこぼれ落ちると、その下にいた小さな蟹が驚いて、鋏を上げて走っていくよ。 心に咲く花 2022年…
集い来て よく笑いたる子らなりき ニチニチソウが咲けば想えり ― 鳥海昭子(とりのうみあきこ) 【現代訳】 集まって来て、よく笑う可愛い子どもたちだったなあ。夏の日差しの中で、日日草が元気に咲いているのを見れば、ふと想…
げんのしょうこ ほのかなる香の甘ければ 今日も煎じて枕べに置く ― 小市已世司(こいちみよし) 【現代訳】 古来、民間生薬として知られた「げんのしょうこ」。ほのかな香りが甘く優しいので、今日も煎じて、枕辺に置いている。…
店明かりのやうに色づく枇杷の実の ここも誰かのふるさとである ― 山下翔(しょう) 【現代訳】 まるで店の明かりのように、燈(とも)るように色づいている枇杷の実。ここも誰かにとっての「ふるさと」なのだと思わせてくれる。…
チューリップ 心の中で咲くときは 初恋の子の顔よみがえる ― 守屋聡史 【現代訳】 「♪咲いた咲いたチューリップの花が……」の童謡もあるチューリップ。そんなチューリップが心の中で咲いたとき、ふと思い出すのは初恋のあの子…
時すぎて 過ぎたる時は 還(かえ)らねど みつまたの黄の 花を見に来よ ― 成瀬有 【現代訳】 時は流れ去り、過ぎ去った時間は決して還(かえ)ることはないけれど、『万葉集』の時代から詠まれ、「永遠の愛」や「肉親の絆」と…
水の辺(べ)の 馬酔木の若木 小さけれど ほのかに群れて 花つけむとす ― 北原白秋 【現代訳】 水辺に馬酔木の若木がある。まだ小さいけれども春の到来を告げるように、ほのかに仲良く群れて今まさに花を咲かせようとしている…