心に咲く花 28回 シロツメクサ

一生は 守ってやれない 孫たちに
シロツメクサの 髪飾り編む― 畠山みな子

【現代訳】
かわいい孫たちと過ごす時間。けれどもどんなにずっとそばにいたくてもそれはかなわない。一生守ってあげることはできない孫たちに、それでもシロツメクサで髪飾りを編んであげよう。

心に咲く花 2020年28回 シロツメクサ


白い毬(まり)状の花を大地いっぱいに咲かせるシロツメクサは「クローバー」としても親しまれています。この春、小学一年生になった息子が四年生になった娘と共に四つ葉のクローバーを見つけては微笑む姿に心和む日々です。

新型コロナウイルスの世界的感染拡大の中、外出自粛で学校には通うことができない子どもたちですが、大自然が今日も子どもたちの感性を育んでくれます。
柿の葉の萌黄色が日々、大きく濃くなっていく嬉しさ。雨のあとのミョウガがずいぶん大きくなって家族の日常を楽しませてくれる至福。野に咲く草花の可憐な逞しさに教わることの多い日々です。

公園の花壇に植えられたチューリップもかわいらしいですが、どの花よりも子どもたちの足元に近い場所で咲くすみれの紫やタンポポの黄色、シロツメクサの白がどれほど心を潤してくれていることでしょう。

掲出歌は、静岡県が毎年公募し、俵万智さんと共に選考委員を務める子育て短歌「あいのうた」の入選作品の一首です。
「『たからもの』 今さら言えぬ スーツ着た 息子の背中 パシンと叩く」
「人文字の ガンバレの字の レの中に あの子が居るはず 炎暑の球場」
「家系図の 如き甘藷(かんしょ)を 掘り上げる 根よどこまでも 長く伸びゆけ」
などの作品とともに第二回の入選作となった作品でした。

親から子へ。子から孫へ。確かにつながっていく命のバトン。生涯にわたって、直接守り続けることはできなくても、思いを込めて編んだ花冠は祖母がくれた宝物として、孫の心に末永く飾られることでしょう。

牧草や緑化にも用いられるシロツメクサは、根に根粒菌という窒素をため込む性質をもった菌があるため、肥料を施す必要がないのだそうです。
可憐なだけではない、シロツメクサの生命力と繁殖力。毎年花を咲かせ、果実や野菜も実らせてくれる大地こそ、実はとても豊かな【永遠の親心】なのかもしれません。


田中章義(たなか あきよし)さん

歌人・作家。静岡市生まれ。大学在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞。2001年、国連WAFUNIF親善大使に就任。國學院大學「和歌講座」講師、ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授も務める。『世界で1000年生きている言葉』(PHP文庫)の他、歌集『天地(あめつち)のたから』(角川学芸出版)、『野口英世の母シカ』(白水社)など著書多数。